迷路

再び静岡の実家へ戻っている。
すっかり犬好きになった姪っ子は二階で一日中mittenと遊んでるが、未だ犬嫌いな甥っ子は犬が絶対来ないリビングに立て籠もっている。
ボクも一日中そのリビングに籠もり、持ち込んだMacBookで仕事をしていたのだが、甥っ子も何やらチャブ台でイッショウケンメイ描いている。
時々ボクの仕事を覗き込んでは「今は何してるの?」と聞いてくるんだけど、伯父のデザイン仕事に興味がある訳ではない。彼にとっては〈子供と一緒に絵を描いてくれる貴重なオトナ〉であるボクと自分が描いたモノで早く遊びたい一心なのだ。
それは迷路だった。
勉強嫌いで何でもすぐに諦めてしまう彼にしては異常に丁寧で細かく壮大な迷路。それもボクを楽しませるために描いた迷路だ。しかも迷路単体で遊べる訳でなく、マスターである彼の意に従いながら、時にアイテムを駆使したり、マスターの出題するナゾナゾに答えなければゴール出来ない仕組み。毎日DSやWiiで遊んではいるものの、それは1974年に発表されたダンジョンズ&ドラゴンズというボードゲームの、RPGの元祖に近い発想だなんて、小学一年生の彼には知る由もない。
しかし実際は小学一年生レベルなので、迷路自体は見た目よりはずっと簡単(袋小路の方が多く描き込まれている)だし、ナゾナゾは本人にしか分からないダジャレだったり、アイテムもソレ使ったら迷路いらないじゃん的なモノなのだが、彼の面白いところはプレイヤーを最終的にはゴールさせたいという慈愛に満ちたマスタリングを展開することである。
何をしても(勉強はしない)、ご飯の最中でさえ親に叱られっぱなしな彼だが、「人を楽しませたい」と思っている時の集中力とサービス精神をキチンと見守って育てていけば、親の杞憂もやがて笑い話になるのではと思った伯父であった。