ボクにとって、カナディアンブラスは特別な存在です。中学二年生で高松に引っ越した時にブラスアンサンブルが好きな友人が出来て、彼が最初に紹介してくれたのがカナディアンブラスでした。もう四半世紀以上も前の話。
ルネサンス音楽から本格的なポップスまで幅の広いレパートリー、ユーモア、軽やかな音楽性・・・ウィリアムバードもジョヴァンニ・ガブリエリもバッハもヴィヴァルディもモーツァルトもベートーヴェンもビゼーもチャイコフスキーもリムスキー・コルサコフもドビュッシーもスコット・ジョプリンもファッツ・ウォーラーもジョージ・ガーシュウィンもビートルズもアース・ウィンド・ファイヤーもクィーンもスティーヴィー・ワンダーも全部ぜ〜んぶ、彼らから学んだ。当時はフィリップジーンズブラスアンサンブルからロンドンブラスへの変遷期で、エンパイア・ブラスが飛ぶ鳥を落とす勢いだったけど、ボクは断然カナディアンブラス派だったんです。
ボクの今の音楽趣味の基礎を築いてくれたのはカナディアンブラス。
1996年にフレデリック・ミルズがカナディアンを離れるまで(Vintage Canadian Brass というそうです)はメンバーもほぼ変わらずに活動していたんだけど、それ以降はメンバーが各所で入れ替わり、数年前に現在のメンバー(tp:クリス・コレッティ/ケイレブ・ハドソン、hn:エリック・リード、tb:アキレス・リアルマコプーロス、tu:チャック・デーレンバック)になってからのアルバムを聴いて、そのサウンドが今も健在であることを知り、いつか新しいカナディアンブラスを生で聴きたいと思っていたところ、とうとうその巡り合わせがやってきたのです。
そんなこんなでこちらもリニューアル後初の東京芸術劇場に行ってきました。
演奏の感想は、なんだか、イチイチ感動して泣きそうになりました。しっかりマイルドで軽やかなニュー・カナディアンブラスなのですが、ちゃんとトラディショナルな部分は響きの面でもユーモアの面でも継承されていて、創設者のチャックが健在だということ以上に新しいメンバーの魅力も発揮出来ており、とても嬉しい心持ちの2時間でした。ブラスクィンテットというフォーマットはメンバーが変わるとすぐに解散してしまったりしがちなのに、カナディアンはまるで名門オーケストラのようにメンバーが変わっても基本的なスタイルを保ちながら新しい挑戦も続けている。これは驚異的な事だと思うのです。
明日は家中の録音を全て引っ張り出してきて、「今日は一日カナディアンブラス三昧」をBGMに仕事に励みたいと思います。