写真年賀状考

私たちが沢山出すから、なのですが、毎年有り難い事に沢山の年賀状を頂きます。こうして、たとえ毎年この一度きりの方でも、ご縁で繋がっているのは掛け替えのない事であり、感謝しております。
私は職業柄、イラストレーターさんやカメラマンさんの趣向を凝らした美しい年賀状を頂くことも多く、年明けの楽しみとさせていただいているのですが、そういう職業でない方の中にもアイデアや工夫を凝らした楽しい年賀状を頂ける方もいらっしゃいます。文章も巧みな方もいらっしゃいます。作曲家の方の年賀状なんて、それはそれは面白いものです。そうでなくても一枚一枚、思いを込めておられる年賀状ですから有り難く拝見しています。
さて、昨今はデジタルカメラの発達やPCやスマートフォンでの文書加工の簡便さも手伝い、差出人ご本人だけでなく、同居するご家族の写真を入れた年賀状を多く頂くようになりました。私たちも親しくさせていただいている方々のお顔を年の始めに拝見出来るのはとても嬉しいことです。
しかし、例えばお子様(もしくはペット)の写真「だけ」を入れた賀状を頂くことが多くあります。差出人様のお子様の成長に対する喜びと(もしくはペットへの・・・以下略)愛情を大変感じはするのですが、殆どの場合そのお子様をこちらは存じ上げないので、一見して何方から頂いた賀状なのか判らず困ってしまいます。さらにお子様の写真ばかりを複数(または大量に)入れておられるものは、当方からすれば、写真の子供たちが果たして同一人物なのかどうかも判らないため、これは大変困ってしまいます。
つまり送り手の思いや愛情がいくら大きくても、情報として受け手に伝わらない年賀状は反って良い印象を与えられない結果になります。
年賀状というのは約10センチ×14センチほどの中に先様への新年のご挨拶と差出人の近況報告を入れるのですから、情報を整理整頓しないと手間ばかりがかかる割に大変見づらく印象の薄い紙面になってしまいます。
基本的には文字のみでも年賀状の機能は十分に果たします。初春を印象づけるイラストや写真などのイメージが沿えられていると正月らしくて風情がありますが、これらを出来合いの印刷物やスタンプや年賀状ソフトに頼ると味気ないものになるのは確かです。
出来れば手書きで、といきたいところですが、年の瀬に悠長に賀状をしたためる暇などないのが皆様の実情だと思います。そんな場合、お手軽に個性を伝えられる手段が、印象に残った旅先の風景や、趣味や仕事の成果物、ご本人やご家族などの写真を使った年賀状なのでしょう。
大抵の場合、もっとも感銘を受けた風景や、作品、ご本人やご本人を含めた家族全員の写真が「一枚」あればそれで十分近況は伝わります。家族の集合写真がない場合も、それぞれの方々の写真が一枚ずつあれば良い訳です。
あとはそこに新年のご挨拶と近況を一言添えれば、あなたの旅の思い出や家族なんて同じものなど世界に一つとしてないのですから、年賀状ソフトの飾り込みなんてせずとも十分伝わる年賀状になります。
写真を使った賀状での良い紙面作りの秘訣は出来るだけ1枚で済ませること、もしくは同一人物(イメージ)を複数載せないことです。そしてそれを大きめに使うこと。人というのは思ったより一枚の写真から多くの情報を受け取る事ができますし、複数の写真を載せても思ったより多くの情報は伝わらないものです。あれも見せたい、これも載せたいと思うでしょうが、ここはグッと堪えて一枚に絞り込みましょう。ここが一番の頑張りどころです。
写真の上手い下手、よりも、この情報の整理整頓が写真年賀状の出来映えと差出人様への印象を左右しますので、年賀状作成を苦手に考えておられる方は来年以降参考にしてみてくださいね。