佐藤和彦リサイタル・ツアー2018


佐藤和彦さんの1週間のリサイタル・ツアーが終わりました。
彼は、高い知性と技術力の中に溢れんばかりの歌心を宿らせている稀有なテュービストです。往々にして「低音担当」として括られがちなこの楽器を名歌手として昇華させています。
ヘンデル・シューマン・ブラームスというスタンダードな「クラシック」と、マドセン・クーツィール・ウィルヘルムという金管奏者には馴染みがあっても一般的にはやはり無名と言わざるを得ない書き手の現代の音楽を、キチンとスタイルを吹き分けながらもシームレスに聴かせる力というのは、並大抵の音楽家にはあまりにも高みであるのに、彼は、それさえ越えていこうとしています。それはやはり感性と知性が常に共存しているからこその技なのだと思います。
中村真理さんのピアノは、作曲家のスタイルによって音色さえ変化し、佐藤さんの知性と感性に寸分違わず寄り添い、その音楽をさらなる高みに押し上げていきます。
素晴らしいソロリサイタルはまるで室内楽に聴こえます。昨日の東京公演もそういう一夜でした。
 
2年前のツアーでは新作アルバムのお披露目ということもあり、爽やかな初夏の岸辺のアルバムのイメージに沿ったデザインとなりましたが、今回は一変して黒バックにし、大人で品格のあるイメージを目指しました。
このテューバに肘をかけたポージングがカッコよくキマるのは佐藤さんならではです。写真は土居政則さん。流石です。