Patrick Wibart


かなり趣味の話を書く。佐伯茂樹さんのリンクで Patrick Wibart さんというテューバ(サクソルンバス)奏者に興味を持つ。彼はサクソルンは勿論のこと、セルパンやオフィクレイドも軽々と相当なレベルで吹きこなしてしまう名手。それのみならず現代音楽の分野でもSpat'sonore という集団で相当面白い活動をしている。
ところで、おそらく過去にもこのくらいセルパンやオフィクレイドを吹きこなしてしまう名手は存在したのだろう。ところが、彼がそれらで演奏している曲はバソン(やファゴット)を想定して書かれたであろうコレットのソナタやダヴィッドのコンチェルティーノなので、セルパンやオフィクレイドのために書かれた高度な技巧曲がどのくらい存在したのが分からない(研究者ではないので知らないだけだと思うが)。有名なのであればとっくにユーフォニアム奏者がリサイタルのプログラムに入れているだろうが、ユーフォニアムのCD制作を相当数担当し、ユーフォ吹きでもないのに比較的ユーフォのリサイタルに足を運ぶ私でもあまり耳にしたことがないので殆ど例がないのかもしれない。確認できるのは Patrick Wibart さんのオフィクレイドによるアルバムに収められている曲たちなんだけど、私は今日初めて聴いた(有名な曲なのだったら超ごめんなさい)。
次の疑問。仮にPatrick Wibart さんくらいオフィクレイド(キィ式/特許はアラリが1817年に考案・1821年に特許取得)を吹きこなした人々はテューバ(バルブ式/ヴィープレヒトが1835年に特許取得)が登場するとそっちにさっさと乗り換えてしまったのか、割と頑なに演奏し続けたのか。「バルブなんて工場の機械みたいなシロモノで演奏すると音楽が死んでしまう!」「親父の考え方はだから古いんだ、いつまでもセルパンの子孫なんか吹いてるとそれこそ音楽が停滞するんだ!」みたいな論争が繰り広げられたのか。それぞれの特許取得は14年しか開きがないからそんなこと言う暇もなかったのか。
オフィクレイドがオーケストラでその座をテューバに奪って変わられた理由は明らかに巨大化し続ける演奏会場に見合う音量と低音域の倍音の問題だと思うけど、それにしてもこのオフィクレイそのシルキーなサウンドは捨てがたいものがある。
リンク先はダヴィッドのコンチェルティーノ Op12 を演奏している映像。
 
参考

これがオフィクレイドのために書かれた曲の一つ。
 

サクソルンバスによる演奏
 

Spat'sonare による演奏。古い映像なのだけど、これが比較的「わかりやすい」演奏。円環状にチューブで繋ぎまくった喇叭(バルブやいろんなものにつながっている)を複数の奏者がサラウンドに演奏する。見た目がスチームパンク。