ロイヤルコンセルトヘボウ ・ブラス

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昨夜のロイヤルコンセルトヘボウ ・ブラス、素晴らしかった。マスターピースを最高な音でじっくり聴けたことも大変よかったのだが、私にとっては何と言っても委嘱作品のグラナート(フェルヘルスト監修?)「コンセルトヘブラース」と、特に、ピアソラの組曲「ブエノスアイレスのマリア(フェルヘルスト編)」が白眉だった。
 
「コンセルトヘブラース」から聴こえてくるのは凡(あら)ゆるブラスアンサンブル音楽のマスターピースに対する敬意と新しい音楽への挑戦であった。そしてその響きの中に一貫してヤン・クーツィールの面影が感じられたところが、オランダ音楽の真骨頂だなと感じた。
 
実際は1時間半の演奏(上演)時間を必要とする「ブエノスアイレスのマリア」はアストル・ピアソラ作曲/オラシオ・フェレール台本によるタンゴ・オペリータである。
僕はこの曲に縁が深く、実は2度公演フライヤデザインを頼まれている。1度目は2011年3月19日の東京オペラシティの公演、そう、お察しの通り東日本大震災により中止となった。2度目はその時の演奏メンバーだった小松亮太さんを中心とした復活プロジェクトとして行われた2013年6月29日の東京オペラシティ公演。ある娼婦の死を通して夢幻のように語られる人生観とタンゴの歴史を絡めたこのオペリータはピアソラの最高傑作であり、先の震災による日本公演の中止と復活が、まるでリンクしているかのように私の経験に刻まれた作品でもある。
その大作をどういう風にまとめて演奏するのかと大変興味深かったのだが、よくあるピアソラの編曲作品にアリガチな表面だけを取り繕った「っぽい」感じにはまとめておらず、あくまで崩壊ギリギリのラインで前のめりに音楽が繰り出されてきて、演奏家と編曲者による作品への愛を感じられずにはいられなかった。そう、それが『ピアソラ』なのだ。
 
終演後は打ち上げにもコッソリお邪魔させていただいた。宴会中にプレイヤー各人からのスピーチがあったのだけど、人種の坩堝であるオランダのオーケストラだけあって、彼らの喋る英語の聞き取りやすいことと言ったら! 普段あまり英語での会話に接する機会の少ない僕にでも通訳なしでほぼ理解できた。
 
最後に、この公演を主催し満員御礼&大盛況にした品川隆さんとそのスタッフさんたちに最大級のブラビッシモをお贈りします!