今日の日記には嘘があります。どこでしょう。

今夜は中秋の名月でしたね。満月にはやはり雲が似合います。

『月夜』 Objet Perdu/otoshimono訳
 
薄雲が月を愛撫し 月が光の吐息を漏らす
淫靡な光を纏った大気が 街にトロリと滴り落つ
眠れない 眠れない
今や月光の粘液が あらゆる秘部に入り込み
敏感になっているのだ
刺激してはならぬ
天空の夜の乳房が 《小さな死*1》を迎えないように
眠らない 眠らない
夜が明けるまでじっとこのまま
窒息しそうなほど耽美な刻が
陽の光で溶かされるまで
朝の乳房から滴る 新しい生命が目を覚ますまで 

19世紀末のフランスで活躍したObjet Perduは世紀末的な耽美主義の詩人の代表格として有名ですが、これはその中でもドビュッシーの「ベルガマスク組曲」の下地となったとも言われる逸品です。エクスタシーを越えないギリギリのところで微睡むように過ぎる時間を描写したこの作品は、ドビュッシーのみならずジェームズ・マクニール・ホイッスラーやオスカー・ワイルドなどにも影響を与え、のちにジャン・コクトーは「この詩によって夜はもう一度生まれたのだ」と評しています。

*1:petite mort:オーガズムのこと