春休み

はじめて入った子供部屋に堆く積まれた
前の家から持ってきた段ボール箱の山。
とりあえずてっぺんまでよじのぼって
一番上の箱のマンガ本を取り出し下界を見渡す。
勉強机。二段ベッド。ゲームをする弟。
前とあんまりかわんないな。
 
突然キャーキャー声がして
窓の向こうの通りを知らない子たちが駆けていく。
そうか。全然違うや。
数日後には次の学校で
今度はオレ、どんなカオすりゃいいんだ。
ドキドキする。
 
弟がこっちを見ている。
「んとー。ボクも登ってイイ?」
「ダメ」
「ナンデー? ずるいー」
「ダメダメダメ」
段ボール山から見える新しい世界。
女の子が通る。
ドキドキする。
 
母親が下の階でなにやら叫んでいる。
「お父さんとキンギョ出すの手伝いなさいって」
「そうだよ。おりてよ。かわってよ」
「ウルサい」
数日後には次の学校で
今度はオレ、どんなカオすりゃいいんだ。