Cicada

蝉は自分がめくるめく季節の中で
夏の風物詩であることを知らない
梢の間から漏れる青空を見上げて
最初で最後の歌を精一杯歌うだけ
 
人は自分がめくるめく時代の中で
何者であるかなんて知らないけど
梢の間から漏れる青空を見上げて
最初で最後の歌を精一杯歌うだけ
 
自分が何者であるか知らなくても
ボクは精一杯力の限り歌を歌おう
例えそれがめくるめく季節の中の
夏の風物のヒトカケラだとしても
 
梢の間から漏れる青空は宇宙の色
ガラス細工の羽根は生命の結晶体
地上と宇宙を貫く樹木に殻を預け
無数の瞳に映る木漏れ陽は万華鏡
 
蝉は自分がめくるめく季節の中で
夏の風物詩であることを知らない
梢の間から漏れる青空を見上げて
最初で最後の歌を精一杯歌うだけ
 

今年初めて出会った蝉の殻に捧ぐ