低音デュオ

先日はボクが本気の前ノメリで聴く数少ないコンサートのひとつである低音デュオ第六回演奏会を聴きに夕刻に杉並公会堂へ。バリトン歌手の松平敬さんとテューバ&セルパン奏者の橋本晋哉さんによる色んな意味で愉快痛快なデュオ。
 
セットリストは
・Z. コダーイ「66の二声練習曲」「77の二声練習曲」より
・松平頼暁「ローテーション I」
・中谷通「2_1/96_1」(委嘱)
・三輪眞弘「お母さんがねたので」(委嘱)
・山根明季子「水玉コレクション No. 12」
 
以下、感想。
 
コダーイの2重奏:前半と後半のステージの最初のプログラムとして配置された。バルトークでいうところのミクロコスモスのような作品で、教育目的で作られたとはいえ知的で、民謡的でもあり、古楽的でもあり、現代的でもある。二人の倍音と歌いの力がテクスチャを越えて混ざり合う。
ローテーション I:2度目の鑑賞。低音デュオの良さは、委嘱作を積極的に再演するところにある。「楽音」と云われる音(や声)とはいったい何なのか、ノイズとは何なのか・・・分解されたり繋がれたりすることで見えたり隠れたりする音のテクスチャがやがて、音楽として立ち現われる様を楽しめる。
2_1/96_1:一度鑑賞したら忘れることが出来ない強いインパクトを持った、ある意味とても「わかりやすい」作品。ひたすらクリック音を演奏し続ける(!)テューバと、音高のグラデーションをドローンしながら自身の身ぶり・手振り・足踏み・身体移動で刻んでいくバリトン歌手。やっていることは至ってアナログなのにデジタルな表現にも感じる。実際演奏するとなると相当な技量と体力が必要なのだが、真似だけなら子供がゲラゲラ笑いながら出来るくらい明快。ビジュアルとしても珍妙で面白いが、至って真面目で人生についてすら考えさせられる作品。とても良い!
お母さんがねたので:彼らが今回のテーマだと言った「デュオとは何か」を根底から考えさせられる作品。二人共舞台上で実演するのに同時に舞台にいることはなく、共演はカセットテープを媒介して行われるのだが、その手順自体が興味深い。そしてそこに使われるテキストが何とも衝撃的。演劇的後味。
水玉コレクション No. 12:おそらく3度目の鑑賞。非常に演奏者に求められる個人技量とアンサンブル力が高度な作品なのだが、この二人にかかればお手の物。聴けば聴く程、山根さんの音楽の純粋さを感じ取る。
 
予ベル・本ベルからアナウンスまでスパイスの効いた舞台作りにも感服。あ〜デザインで参加したい参加したい。