翔べ、高く!


ロビーで久しぶりにお会いしたベテラン・トロンボーン奏者の一言「もう別次元だね!」に言い尽くされている、それが今年のスライドジャパン・コンサートツアー2016《FLY HIGH》でした。
2016年の夏、我々はすでにスライドジャパンが存在する世界に生きていています。2015年夏の彼らのデビューを起点として、日本トロンボーン史年表は確実に次の時代区分に入ったのです。
つまり、野球やサッカーの様に海外を拠点に置くトップトロンボーンプレーヤーと日本を拠点に置くトップトロンボーンプレーヤーが「日本代表」というタッグを組むことがもう珍しくない時代、彼らによる世界最高水準のミラクルなプレーやコンビネーションを聴衆は去年のように「驚く」のではなく今年のように「愉しめる」時代に入った、ということなのです。
 
しかしながら、彼らの全てが天才という訳ではないです。様々なバックボーンとキャリアを持ち、挫折と成功を繰り返し、様々な場面で悩み苦しみ、それでも明けない夜はないと信じて修羅場を幾度もくぐり、ミラクルな技術・表現力・歌心・メンタリティを身につけ、この舞台に立つに至った若者たちです。
だから、今回も良い意味でギラギラしてました。練りに練った演奏プランだけでなく、舞台の上で瞬時のアイデアに挑み、予想外のパスを皆で絶妙に回し、難関をかわして客席にゴールを次々と叩き込んでいきます。
危ない橋を敢えて渡ってくる。あと1ミリでも足先が狂ったらよろけるギリギリまで攻めて、表現の極みと孤高の表現に挑んでくる。転ぶときは前へ、ボール(音楽)が活きる方に蹴る。
この姿勢から生まれてくるキレッキレの表現が、あの拍手と興奮で窒息しそうになるほどの聴衆の熱気を生み出したのだと思います。
  
昨年は一観客としてそのデビューに度肝を抜かれたスライドジャパンですが、今年はデザインスタッフとして関西と東京の2公演とデビューアルバムCDの制作に関わることになりました。
お話をいただいて初めてお打ち合わせをしたのが3月初旬でしたから、5ヶ月の間彼らとモノづくりの旅をしてきたことになります。率直に言うとメンバーは皆、愛すべきヤンチャリカたちなのですが、もし彼らが大人しく自分の今持っている引き出しの中身で何とかしてしまおうというタイプだったら絶対辿り着かなかった素敵な場所というのがあるわけで、とても楽しい旅になりました。また一緒に航海に出られればと思います。
写真は東京公演のリハーサル中で撮影した一枚。