片隅に。


この物語の主人公と祖母は本当に同じくらいの年で、あの朝、同じ様に呉からあのキノコ雲を見上げました。
子供の頃、散々に親戚一同から聞かされ、半ば嫌気と拒否感さえある広島の戦中戦後を追体験するかのようなこのお話は、正直、最初は見たさ半分見たくなさ半分だったのです。広島を背景に持つ人の多くは、そういう気分になると思います。
しかしながら漫画を読み進め映画を鑑賞するうちに、「過去と現代の広島があの一発で分断されたものでなく」「それは会話と会話の間に起こったことでさえある」「どんな戦乱の中にも人々の普通の生活がある」「今も昔も人は簡単に死ぬし、そうは言ってもそれほど簡単には死なない」という実感を、この物語で再確認し、祖母が見た風景を一緒に見ることができた気がして、彼女の何気ない言葉の端々のニュアンスを久々に思い出すのでした。