SLIDE JAPAN 2017 超個人的オススメききどころ


先日 SLIDE JAPAN 2017 東京公演、盛況に終了。ここ数年トロンボーン界隈での仕事で若手奏者との交流が増える一方(スタッフ参加の皆さんもお疲れ様!)、昨日は打ち上げで古賀慎治さんと久しぶりに長話が出来て大変楽しかったです。
さて、これから週末にかけて関西・愛知とツアーが進む訳ですが、予め「しておいた方が良いネタバレ」がありまして、それを一つだけお話します。
 
今、ヨーロッパの古楽は第三世代に入っており、クラシカル・ミュージックでも最もトレンドに乗ったジャンルに台頭しつつあります。古楽レパートリーの再発見につとめた第一世代(イ・ムジチやモーリス・アンドレなどかしら。まちがってたら指摘してね)、「HIPP(Historically Informed Performance Practice)」すなわち時代考証演奏法を駆使して当時のスタイルを駆使して新鮮な演奏を聴かせる第二世代(クイケン兄弟など。日本ではBCJなどがここらへんかも。もちろんこの世代もまだまだ健在)、そしてそれを熟知しつつさらに自分の演奏スタイルも組み入れて自由で躍動する音楽を聴かせる第三世代です(ちなみにエルヴェ・ニケは第二と第三の橋渡し的存在なのだそう)。
メンバーの清水真弓さんは、そういったヨーロッパの空気の中でドイツを拠点に活動し、実際サクバットも演奏されるトロンボーン奏者です。今回彼女がSLIDE JAPANでディレクションされた3つのヴェネツィア楽派の音楽は、そういった古楽アプローチをモダン楽器で表現するという意味において示唆に富んでいます。
コルネット(ツィンク)のフィンガリングのようになめらかにスライディングしていくアルトトロンボーン、圧倒的な音量よりも肉声のような温かみを持った内声、決して出過ぎない上品で包み込むようなバスパート。今でも演奏されがちな1960〜80年代のモダンブラスがガンガンなガブリエリ・アプローチとは全く違う、かといって間違った古楽アプローチをした音楽で陥りなりがちな貧相な表現もここにはなく、なめらかで躍動感に満ちた豊かな響きが表現されています。
トロンボーン・ファンならずともこの演奏は必聴です。次のブラスミュージックへのヒントとなる響きがそこにはあります。