「よく知らないんですけど」

例えばボクが皆さんの前でデザインやフォントの知識や歴史的背景について「よく知らないんですけど」なんて言ってたら、ボクの仕事を信頼してくださるだろうか。
これはプロアマ問わず以前から感じる事なのだが、コンサートで自分が演奏する音楽についてものすごく不勉強なMCをされる方というのは、やはりその演奏も推して知るべしである。そういう方々の多くは常套句としてMCの最後に「まぁよく知らないんですが」と嘲笑的に付け加える。
まさか「《い わ ゆ る》良い音とノーミス」で演奏すれば知見なんて関係ないとまでは思ってないと信じたいのだが、それぞれの音楽が持つバックボーンや歴史的な位置付けを「オタクが自慢する気持ち悪いウンチク」「授業中の先生の退屈な話」くらいにしか思っていないのであれば、それは自分の表現に愛情も責任も感じていないという事ではないだろうか。
非常に残念である。
やはり音楽表現に秀でた方々とお話しさせていただくと、まず、その知見と情熱の量に圧倒される。底がないくらい勉強されているし、今この瞬間も非常に新しい知見や表現に貪欲である。絶えず代謝しているので表現の肌がピチピチなのである。
逆に昔取った杵柄と虎の威で受け身な活動になってしまっていると表現の肌はボロボロに劣化し、腕は錆び、やがて中高生を含む初学者を含めて若い世代にその薄っぺらさがバレてしまう。
返す返す、非常に残念である。