準特選盤

ガウディウム

ガウディウム

先日KOSEIレーベルから発売したCD「ガウディウム(KOCD-8013)」がレコード芸術(音楽之友社刊)誌の『準特選盤』に選ばれたそうです。制作に関わった者として、どういう形であれ作品が評価されたことは本当にウレシいです。
しかし、吹奏楽という市場は「音楽作品」として評価されたものが必ずしも売れる作品になるとは限らないのが悲しい所です。むしろ「音源資料」として評価できるかどうか、もっと“業界的に”分りやすく言うと「吹奏楽コンクールのネタとして、自分の所属するバンドで効果的に演奏出来る作品が多く収録されているかどうか」が問題になっている。
全体的に派手で耳障りが良く、約7分の演奏時間の中で一応の緩急があり、難易度的には中の上位で、まだ余りコンクールでは演奏されていない・・・これが多くの吹奏楽愛好家が考える「いい曲」なのだと思います。すると「ガウディウム」をはじめとするダグラス・ボストックと東京佼成ウインドオーケストラのコンビで創ってきた「Best of British」のシリーズは全く吹奏楽愛好家向きではないでしょう。
イギリスの音楽を丁寧に丁寧に真面目に紡ぎだしているこのシリーズは一聴するととても地味です。特に「ガウディウム」に収録されている「ジャイルズ・ファーナビー組曲」なんか耳にも留まらないかもしれない。しかし、よく聴いてみてください。これほどたおやかにイギリスの音楽を表現した吹奏楽による演奏が日本であったでしょうか。16世紀の音楽を絶妙な響きのバランスの中で雫が一滴一滴落ちる様に表現するジェイコブの豊かな音楽性を、指揮者と演奏家は見事に導きだしています。
アルバムを通して聴いた後心が豊かになり、またリプレイする気になる音楽。吹奏楽を収めたアルバムの中にそのような種類のものがいくつあるでしょうか。