仕事で児童合唱のカリスマ指導者のレッスンを見学。その驚くべき指導法の一端を垣間見ました。
具体的な技術や方法論などを挙げるとキリがないので書きませんが*1、一番特筆すべきは「児童との信頼関係をいかに築いているか」ということです。
兎に角子供達は歌が歌いたくてしようがない。練習の30分前から自主的に大勢の子達が来て、その先生がいなくてもずっと歌っています。練習時間が残り少なくなって来ても「もっと歌いたい」って先生にみんながせがみます。そういう関係です。具体的な練習ノウハウよりも、この環境づくりこそが、転任先で創部させた合唱部を数年で合唱コンクール上位入賞させてしまう秘訣なのだと思います。ここには鬼の指導ではなく、心が通ったコミュニケーションがあります。
この点に関連する事を抜き出してみると
- 原則褒める。
- 叱るのはモラル*2についてのみ。歌の不出来について叱ることは一切ない。
- モラルについて叱るときは短時間で。練習に対する姿勢が音色とアンサンブルに影響することを常に伝える。その後の雰囲気の切り替えも早く。後に引きずらずとにかく明るく。
- 教えるときは原則自分で歌って実践する(この指導者は男性ですが、ファルセットで子供の音域がきちんと出せます。その姿が少しユーモラスで良いのです)。上級生に見本として歌わせることもある。ここで上級生として下級生の手本となる自覚と自信をさりげなく刷り込ませる。
- 褒めるときは他人と比較するのではなく、その児童の《伸び》を褒める。それは個人でも全体でも一緒。そしてみんなの前で褒める。
- 色んな編成でチーム分けし、それぞれを演奏させ、ディスカッションさせる。聴いた感想を発表させるときは「駄目だったこと」だけでなく「良かったこと」も必ず発表するよう指導する。人の演奏を真剣に聴く指導でもある。
- 出来てないところは、歌っている間にその児童のそばへサッと寄ってさりげなく指導。出来たらすぐ褒める。つまり出来ないことを全員にさらしたりしない。
- 名前を呼ぶときは学年性別関係なく「さん」付け。これにより児童を一人の人間として扱うという対等の関係が生まれる。但し場面によっては子供たちが呼びあっている愛称を使う。
書き出すと当たり前なことばかりなのですが、この一つ一つ全てを丁寧に実践していくのは大変だと思います。彼はそれを「みんなの合唱の先生」として《完璧に演じきる》ことによって体現しています。ここにカリスマ指導者の凄みがあります。
しかし、上に挙げたことは我々の実生活においても役に立つことばかりです。今週は落ち込んでばかりでしたが、最後にとても有り難く温かいヒントをいただきました。