peanut

『落花生は生で喰えるか』という話になった。
SFCのメンバー4人は「YES」、mochicoだけ「NO」だった。彼女は一番年下だし多勢に無勢だ。
ボクは静観した。そもそも知らないし、考えたこともなかった。それに過去《うーめんの悲劇》を経験した者として、一抹の不安がよぎった。

《うーめんの悲劇》とは。
1991年、埼玉大学吹奏楽部の部室で起こった、言論弾圧事件。“幸手にはサッテリアがある”だの、駄洒落的ネーミングのネタを各自が披露していたところ、hiroshi(トランペット・当時運搬隊長)が「オレ、東北で“うーめん”って看板見たことある」と発言。それを受けた全員が「それはラーメンの見間違いだろ」と馬鹿にし、半泣きで抵抗するhiroshiを論破してしまった事件。それから15年後、仙台で《温麺(うーめん)》の看板を見たotoshimonoは愕然として食べかけのずんだ餅を落とし、己の過去を恥じた。

ところがmochicoは平成文明の申し子だった。彼女は携帯電話からネットに接続し、落花生の調理法についてつぶさに調べはじめた。そして彼女の経験にも照らし合わせながら辛抱強く論破していった。そして勝った。見事に多勢を退けた。《落花生の悲劇》は起こらなかった。
あの時、hiroshiにインターネットの翼があれば・・・・。一人物思いに耽ながら、ボクは氷が溶けて薄くなった炭酸を啜った。