2月25日の日記

「んー」
見上げた空はさほど晴れてもなく、空気は少し埃っぽかった。大学入試二次試験の論説問題は拍子抜けするほど簡単で、出来上がった拙文を3回読み返したが、上等とは言えないまでも出題者の意図は確実に突くことは出来ていそうだ。寧ろ、退出が許される試験終了の一時間前までいかに暇を潰すかの方が難儀した。大学入試なんだから、ふざけた落書きも出来ないし、昼寝も出来ない。だいいちまだ午前中だ。だからさっさと大学の門を出てこうして空を仰いでも、長い受験勉強から解放された感動より、待ちくたびれた疲労の方が強く虚ろだ。だからといって受験のために泊めてもらっている親戚の家にさっさと戻るのもつまらない。とはいえ、どこに遊びに行こうにも、四国から上京してきたばかりの高校生に首都圏は途方に暮れるデカさだ。
だから僕はせめて、これから生活するこの辺りがどんなところなのか少し歩いてみることにした。今考えれば、本当に受かっていたかどうかも分からないのに大層な上から目線だ・・・
(otoshimono著『とある部活の超音痴長号・壱の巻』より)

 
その1990年2月25日から20年が経った。
その間に僕なりにいろんな別れと出会いをし、たくさんの失敗と挑戦と、少しばかりの手応えを感じてきた。四国から出てきた世間知らずの小心者は相変わらずだが、奇跡的に首都圏に漂い続けている。
今年の大学の空は、今年の受験生の目にどのように映るのだろう。