動物の謝肉祭

先日のさいたまファンファーレクラブの練習にて「サンサーンス:動物の謝肉祭」の金管10重奏(+打楽器)版を試奏した。版元はフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル(PJBE)やロンドンブラスの譜面も手がけるJust Music。編曲者はSimon Wrightという人。調べてみると2009年の9月に出版されたものらしい。有名なPJBE版ではPeter Reeveが編曲にあたっているのだが、この版はそれを下地に短くまとめた感がある。「動物の謝肉祭」は全14からなる組曲だがこの版には9曲しかなく、しかも最終楽章は3分の1くらいの尺しかない。
PJBEに慣れ親しんできている人にはかなり物足りない感があるが、あくまで下地はReeve版で、打楽器を使用してもしなくても演奏が可能なオプション譜面がついているので演奏会などに取り上げるのには最適なのではないだろうか。
ボクはこの曲が好きだ。表向きは生き生きとした描写力で書かれた室内オーケストラの標題組曲として子供向けコンサートの大事なレパートリー。しかし裏の顔は、当時の楽壇に辟易したサンサーンスが田舎の謝肉祭の最終日に開かれたオフレコ演奏会のために書いた、痛快な業界批判を仕込んだ冗談音楽だからだ。のろまな亀にされたオッフェンバック(第4曲)、妖精を象に変えられてしまったベルリオーズとメンデルスゾーン(第5曲)、ご用聞きの批評家なんてロバみたいに間抜け(第8曲:Simon Wright版には未収録)、ヘタクソなピアニストは動物園に放り込んでしまえ(第11曲)、オレだってロッシー二だって民謡だって音楽の化石さ(第12曲)、だけど結局楽壇なんて同じ穴の中の狢(第14曲)・・・云々。それでいて音楽的に実に高度な技法が盛り込まれている。「水族館(第9曲:Simon Wright版には未収録)」での色彩感、「カッコウ(第9曲)」での静かな和声進行、「大きな鳥かご(第10曲:Simon Wright版には未収録)」での開放感は20世紀音楽への道標にすら聴こえる。
来年にはどこかしらで披露出来れば、などど皆で話した。
 
参考:こちらで購入出来ます。(但しユーロ)

サン=サーンス: 交響曲第3番/動物の謝肉祭、他

サン=サーンス: 交響曲第3番/動物の謝肉祭、他

  • アーティスト: オムニバス(クラシック),バンブリー(グレース),バレンボイム(ダニエル),リテーズ(ガストン),ロジェ(パスカル),パリ管弦楽団,アルゲリッチ(マルタ),パールマン(イツァーク),フランス国立管弦楽団,シカゴ交響楽団,ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2005/03/23
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動物の謝肉祭/フレンチ・コンサ-ト

動物の謝肉祭/フレンチ・コンサ-ト

  • アーティスト: フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル,ボザ,サン=サーンス,ドビュッシー,サティ,シャブリエ,プーランク,ハワース(エルガー),リーブ,モワット(クリストファー),ヘイゼル
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