金赤にしてください。

デザイナーがクライアントに「目立たせたいからその文字を金赤*1にして下さい」と言われたとします。
そのときデザイナーは、言われた通りに文字を金赤にしたら問題が解決すると思ってはいけません。クライアントの目的は「目立たせたい」ということであって「文字を金赤にすること」ではないからです。
クライアントの多くはデザインの専門家ではありません。文字を目立たせる方法としてとりあえず思いついた言葉の綾が「金赤」に過ぎない場合が多いのです。場合によっては文字を金赤にすることでより周りに埋もれてしまい目立たなくなるもなります。そうなると次は「その赤くした文字を白フチに」「それにシャドウ(影)をつけて」と指示がエスカレートしていき、『これはチョット』というテイストが出来上がっていきますし、〈目立たせる〉という当初の目的からも外れていくことでしょう。
これをもしデザイナーがクライアントのせいにしているとしたら大間違いです。
クライアントとのコミュニケーションを築けていない、そして信頼されていないデザイナー側に問題があると、まず考えるべきです。
もう一度言いますが、クライアントの多くはデザインの専門家ではありません。目的をもっていても解決策についてはスキルがないからデザイナーに仕事を頼んでいるのです。デザイナーは仕事を受けたからにはクライアントの目的に全力で応えなければなりません。そのために必要なのはまず「信頼してもらうこと」です。それはクライアントが何をして欲しいと思っているのか、ちゃんと聞くことです。デザイナーの〈オレ流〉を押し付けることでもなければ、クライアントに媚を売ることでもありません。
そうすれば「目立たせたいからその文字を赤くして下さい」と言われたら「承知しました。赤も試してみましょう。けれどこういう方法もありますよ」と提案も出来る訳ですし、納得してもらう事も出来るわけです。
ただし、どんなにクライアントの信頼を得ていても、デザイナーの考える理屈だけがいつも正しいと考えてはいけません。クライアントの提案の方が世の中にグッとくることだって沢山ありますし、我々デザイナーに新しい考え方を吹き込んでくれる場合だって沢山あるのです。
これがデザイナーとして長いことメシを食ってるボクのささやかな経験値です。

*1:カラー4色刷りの際にマゼンタ100%&イエロー100%を掛け合わせてつくる赤色。まっかっか。