管樂合奏計画


野暮用で資料の整理をしていたら面白い写真が出て来た。
大学を卒業して間もない頃(1996〜7頃)、小型の管打楽器による室内楽合奏に非常に興味があって、フレデリック・フェネル博士の著書「ベーシック・バンド・レパートリー」のアナリーゼを基にホルストの第一組曲を出来るだけシェイプアップしたスタイルで演奏する試みを後輩達と研究したことがある。丁度フェネル博士自身もTKWOで同じ様なコンセプトのアルバムを作っていた頃だった。
「管樂合奏計画」と名付けられたこのプロジェクトは、例え一般大学の吹奏楽部であってもコンクール一辺倒でなく、かと言って吹奏楽をノスタルジーやカタルシスのみでアプローチするようなイージーな姿勢ではない方法を模索する試みとして始めたものだった。
おおよその編成は以下の通り

 Fl=1(Picc持ち替え)/Ob=1/E♭Cl=1/B♭Cl=3/
 Fg=1/BassCl=1/A.Sax=1/T.Sax=1/Cb=1
 Trp=2(うち1本E♭持ち替え)/Hrn=2/Trb=2/
 Euph=1/Tub=1/Perc=3
 計22名+指揮者1名

吹奏楽〈管打楽アンサンブル〉というフォーマットの良さは音色が溶け合うことではない。それは弦楽合奏などの同族楽器による大アンサンブルの方がよっぽど溶け合う。むしろ吹奏楽は音色の違いを楽しむべきであり、それは音楽の組み立て(作曲サイドからもあり、演奏家サイドからもある)によってシンクロしたり対立させたりしながら変化を出していく。楽器の音色を際立たせようと思えば出来るだけひとつの楽器が少ない方が良く、木管楽器はほぼそれを実現させている。一方金管楽器はその基本構造ゆえに大きなまとまりとしてはそれ自体が同族楽器である。バンドにおけるハーモナイズの折のサウンドの要としてオクテットとしても単独に取り出せる編成にした(これはフェネルのアナリーゼの第一組曲の三楽章の第一マーチに「Brassband」と書かれていることにも由来している)。打楽器はティンパニ担当1名と皮もの1名、鍵盤1名を基本の組み合わせとした3名。結果この22名でウインドアンサンブルによる殆どのサウンドデザインが可能であると(当時)考え抜いた編成だ。
丁度プロフェッショナルの世界では中川良平さんの東京バッハバンドや東京チェムバー・ウィンズ、東京ニューシティーフィルの管楽セクションを中心に結成された東京ウィンド・ソロイツ、または第一期のマジカル・ウィンズなどが活動をしていた頃で、ハルモニーから出発する室内楽のイディオムで吹奏楽を捉え直すことがとても有意義に思えたし、フェネルの言うところのウィンド・アンサンブル理論を体感してみたいという気持ちもあった。ボクはとっくにOBだったので、プロデュース的な立場で参加し、実演に関しては当時の学生達が取り組んだ。
選んだ曲はホルストの「第一組曲」とバッハの「羊は静かに草を食み(BWV208)」。演奏会という形で成果を発表することはなかったものの、吹奏楽部の春合宿(この合宿は期間中にクローズドのアンサンブルコンテストとコンサートを開くことが目的の行事)に部員やOBの前で試演する機会に恵まれ、たいへん好評を得た記憶がある。
録音もどこかにあるはずだ。早いうちにデジタル化しなければと思っている。
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本日デザインの師匠の通夜でしたが、また気持ちなど整理がついた頃につらつらと書きたいと思います。