意識

アマチュア演奏家相手の映像会社や印刷会社さんというのは、全てではないのですが、著作物に対する意識が総じて低い業者さんが多くで困ります。先日も「A楽団の演奏会のDVD制作を担当しているB社ですが、アナタが作成したフライヤのデザインデータ、演奏会のパッケージで使うので頂けませんか。出来ればイラストレータデータでお願いします。」という問い合わせをしてきました。このケース、2件めです。昨年問い合わせてきた別の業者は「他の楽団でデータを貰えない場合はフライヤをスキャニングして作っちゃってるんです」とノタマってました。
なんだ、その、人の褌で相撲を取って平気な態度は。
アマチュア向けに楽団の舞台公演を録画して編集し、出演関係者や希望者に販売するサービス業者ってのは、結局のところ彼らがソフト販売をしているのだから、私的な録画・録音という基準にすら入りませんよね。商用制作物を販売する業者が他の業者の制作物を「くれ」とはないでしょう。確かに私はA楽団の演奏会のためにフライヤなどの宣伝媒体のデザインを請負いました。その演奏会のビジュアルイメージにと言ってもいいかもしれません。だからといって、それは第3の業者が商用に共有してもイイとはヒトコトも言ってませんし、楽団がデザイン買い取りで依頼されるのであれば最初からそれを上積みした価格でデザインします。もしくはその業者にデザイン流用料金を支払っていただきます。
また、昔、やはりアマチュアのC楽団の演奏会のためにフライヤデザインを毎年していた際に、印刷担当の業者がこちらのデザインを無断で流用して当日パンフレットを作り続け、挙げ句の果てに彼らの会社のホームページで「我が社がデザインした作品」として堂々と掲載し続けていたことがあります。当然消去していただきました。その業者も普段からアマチュア楽団などの印刷を手がけているところでした。
そういった類いの業者というのは普段からアマチュア楽団を相手にしているため、そういうデザインなどの部分にプロフェッショナルが関わってくる事など皆無に近いのでしょう。殆どの楽団さんは自分たちの手作りでフライヤやイメージを作成していますので、それを流用すると喜ばれるのでしょう「なんだかプロみたい」と。それはそれで大変危なっかしいとは思うものの、まぁケースバイケースです。しかし、そういう仕事ばかりをしていると、プロフェッショナル同士の仕事のルールに対する意識がどんどん低くなります。
これがデザインのみならず、公演にプロフェッショナルの演奏家がゲスト出演などされていたら〜キチンと彼らに撮影して販売する許諾を得ているのか〜など考えただけでもゾッとします。
ある映像業者には意識の低さに対して厳しく注意しました。平謝りの返事に「それではデザインの流用ではなく、パッケージのデザインを改めてお願いします」と言われたので打ち合わせを始めたものの、商用なら当然付けるハズの表記事項も知らないし、文字組に対する質問をしたところ「あ、これは演奏会プログラムをスキャンしたデータとか、印刷データのPDFを貼っていただければ良いので」と全く頓珍漢な事を云われました。デザイナーが、どういう仕事をする人なのかすら判ってない。当然その仕事自体、お断りしました。
今回の件もA楽団の方にキチンと説明した上でデータを差し上げるのはお断りしました。楽団の方は認識を新たにして頂いただけでなく私の心中を気遣っていただきました。なので今後とも楽団とはお付き合いは続けるつもりです。
私が(自分が出演する場合以外の)アマチュア楽団やアマチュア音楽家の公演デザイン自体の依頼を殆どお断りしている理由は、運営されている方や出入り業者さんの意識の低さから起こる、そういったトラブルを避けるためです(自分が出演している場合は逆にギャランティは一切頂きませんし、業者間のやり取りが発生する場合は自分で交渉します)。しかしお話させていただいて、その辺りの認識がキチンとされていると判ればアマチュアの方々であっても喜んでお受けいたします。