ちょっと前に装丁させて頂いた書籍の見本が届きました。
「歌枕」とは元は和歌のモティーフやそれらを集めた書籍を指していたようですが、今ではもっぱら和歌のモティーフとなる名所や旧跡を指すようです。それらの中には実際には存在していなかったり、特定の場所が曖昧なところもあるようですが、それは和歌というのが、実際行った事のない場所を想ったり偲んだりしながら詠む文芸としての発達をしてきた経緯があるからだそうです。京に住まう貴族が遥か離れた坂東(関東)や南海(四国)の地に流された友人を想いながらの嘆きの歌、季節の歌会のお題目、教養としての嗜み・・・想像力を働かせながら言葉のみで紡いだ風景はまた独特の味わいがあるのでしょう。
そういった幻想的な地誌が書かれた辞典として読んでも面白い本かもしれません。
著者と編集者は兄弟で、卒寿を迎えた母への贈り物と前書きにあります。辞典とはいいながら味わい深いですね。
- 作者: 廣木一人
- 出版社/メーカー: 東京堂出版
- 発売日: 2013/02/26
- メディア: 単行本
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