ベストショット


演奏会のハシゴ。とは言っても純粋に聴衆としてではなくカメラマンとして。
前半は武蔵小金井で須川展也さんのアマチュアのお弟子さんの発表会。この会の最後には必ず須川さんのステージが用意されていて、彼の今一番興味のある音楽を演奏するというファン垂涎のステージです。今回もピアノに奥様である小柳美奈子さんを迎えての演奏で、それはそれは素敵な時間でした。
勿論本編の発表会の方も、演奏活動を自分の人生の重要なひとつとして取り組まれ続ける皆さんの姿勢が凛々しくて輝いていました。
後半は南青山に移ってジェイズ・クレイズの夏ライヴ。今回は大阪の女性トランペットユニット、キャトルフィーユをお迎えしての一夜でした。この日の南青山は神宮の花火大会でごった返していましたが、ライヴ会場の熱気も相当なもの。とはいえ、涼しく素敵な音楽たちに魅了されましたが。
 
さて、今日もカメラマンとして演奏者の姿をファインダーから覗いていたのですが、ライヴの写真というのは好き勝手な場所で好き勝手な場面を撮る事が出来ません。
原則として、お客さんの邪魔になってはならない。それは存在としても音としても。「存在として」というのはお客さんの邪魔になる様な位置で写真を撮ってはならないということ。「音として」というのはシャッター音が演奏鑑賞の邪魔になってはならないということ。
一番良い条件で音楽を鑑賞出来る場所に客席があるのですから、そこにカメラマンが入る訳にはいきません。出来るだけ邪魔にならないように隅や奥や死角から撮影するほかありません。それでかつベストアングルを探るのがカメラマンの第一条件。これは実は何とかなります。
ところが何ともならないコトがある。それは音。
実は良い演奏家というのは、ピアノ(p:音が小さい)であればあるほど良い表情をします。小さい研ぎすまされた響きの中に音楽の全てと喜びを込める一流の音楽家は、ピアニッシモで今にもこちらが恋をしてしまいそうな表情をします。望遠レンズで至近距離の彼ら彼女たちを見つめているのはボクだけなんです。でもシャッターが押せない。何故か。
シャッター音がお客さんの邪魔になるからです。
ここをお客さんに一番楽しんで頂きたいからです。
この表情を収めるには撮影優先のセッションしかないのですが、そのためだけに演奏していただく機会なんて、広告撮影など以外は皆無に近いです。しかも広告撮影の時に本気のコンディションで演奏が出来るとはまず考えにくい。
だから、本当のベストショットというのはボクの脳裏にだけあります。