A4の荒野


辞書の組版フォーマットを作っています。
つまりは、辞書というシステムと検索する人の間を取り持つインターフェイスを作る仕事です。
今時の辞書組版というのはテキストにタグ付けして流し込む自動組版が主流ですが、その流し込むフォーマットそのものを作っているので、部品のひとつひとつから作ります。この時点ではチマチマと手作りです。
わずか2ミリ四方のアイコンを作っては調整し、作っては調整し、それを積み上げながら延々と組み上げて行きます(その前段階の、判型に対する文字量や主要フォントの決定などは半年以上前から検討しています)。0.1mm単位で全ての部品を寄せたり広げたり上げたり下げたりしながら制作していく訳です。
もうわずかA4程度の広さが無限の荒野に見えて途方に暮れます。
こういうとロマンティックに聴こえるかもしれませんが、実にジミーな作業です。出来たーっと意気揚々に提出しても、編集や編纂者から沢山の修正希望が入りますので、その度にどっと疲れが出ます。その作っては見てもらっては直し、作っては見てもらっては直しの繰り返しです。ドラスティックに事が進んだりしないのでストレスがドンドン溜まります。しかし、この方法でしか1000ページを越える辞書を破綻無く組版する仕組みを作れないです。編集者の方もボク以上に大変な根気がいると思います。
そしてA4の荒野が出来上がったとき、さらに先に広がる1000ページ超の世界がやっと姿を現すのです。
(写真は日本最初の本格的国語辞典「言海」)