クリリンのような

学生の頃、プロのイラストレーターになりたくて、建築家をやっている従姉の旦那さんに相談したら、彼が講師を務める某専門学校の同僚のイラストレーターさんが相談にのってくれた。
で、彼が僕のポートフォリオを見て言った一言はこうだ。「なれると思うよ。ただし2年間で300点以上の作品を仕上げることが出来たらね」
当時はウヒャーッて思った。でもその後、イラストレーターにはならなかったけどデザイナーになって1年で200冊のペースで本の装丁やってた(同時に装画を描いたものも沢山ある)んだから、彼が言ってたことは無茶振りどころか、さほど困難でもないペースだった訳で。
学生(下積み)時代に必要なのは、丁寧に質を上げる鍛錬も勿論だけど、一見自分のキャパシティをオーバーすると思っちゃうくらいの量を貪欲にこなすことです。今は何の無理ゲーだって思うかもしれないけど、悟空やクリリンだって亀の甲羅背負ってスンゲー走んないと天下一武道会に出る機会すら与えてもらえなかったんです。これは根性論を言ってるのではなくて、圧倒的な量をこなすことで質の向上(を効率的に得るヒント)とテクニックの引き出しの数と相手への信頼を同時に獲得出来るということです。
そしてこれは人生のチャンスロスを減らすことにも繋がります。とにかく手を挙げ続けることで自分を見つけてもらう。最初は「本当はアイツじゃないヤツに頼みたかったんだけど、最初に手を挙げたのアイツだし仕方ないか」でもイイ。初めは期待されてなくても数こなせば、気がつくと、幾ら才能があっても手を挙げないヤツより使ってもらえるようになる。
世の中、才能があるヤツはいっぱいいます。でも、その多くは恵まれているが故に向上心に対して無欲です。中には向上心に溢れながらも手を挙げ続ける悟空のような天才もいますが、そういう彼らは業界のトップランナーになって時代を引っ張る人になります。それ以外は手を挙げ続けて食らいついてきた、最初は鳴かず飛ばずだったクリリンのようなヤツです。才能があっても手を挙げ続けない向上心のないヤツはチャンスロスでいずれ消えます。