コンヤノシロバカマ

《紺屋の白袴》って言葉、ありますよね。袴を紺色に染める職人が、自分の袴を染めないママにしているってヤツ。一般的には仕事などで「顧客の注文をこなすのに忙しくて、自身の事に手をかけてる暇がない」状態を言うそうですが、ボクは必ずしもそうじゃないと思うんですよ。
つまりある職能に長けている人というのは、本人が一番手際を解っているものだから「自分の事は本当のデッドラインまで引っ張っちゃえ」というスケジュール取りをするので、周囲からは〈暇がなくて全く手をつけてないように思われてしまう〉のではないか、そしてイザ取り掛かろうとする段になって〈カッコ付けようと気負ってしまい、アレコレ考え過ぎて、いつまで経っても取り掛かれない〉のではないか、という事です。
で、ですね。デザイナーという仕事をしていると、法人などの年賀状を請けることがよくあります。広報課などの担当者さんと打ち合わせをしてアイデアを話し合い、プレゼンして案を決定し、微細を整えたりしながら印刷所に回して納品します。
また、年賀状のアイデア・テンプレート集なんていうものを出版社などから依頼されることもあります。こちらは夏に業界の見本市が開かれたりする関係上、年が明けて春先には、もう来年の年賀状を大量に作成しています。鬼が笑うと言うより、鬼のような量です。
でも他人が使うモノを作る方が意外とポンポンとアイデアが出たりするので、クライアントの無理難題でも鬼のような量でも何とかこなせるのがデザイナーという稼業です。
では自分のはどうかというと、サクッと作れっちゃあ作れるのですが、テンプレート集の中の一つみたいな「売り物」っぽい「ハマる」デザインになっちゃうのはチョットなぁ〜、とか考えちゃうんですよ。ましてやそれをちゃんと印刷したら売り物ソノモノな訳です。当たり前ですよね、普段作ってるのが売り物なんですから。
で、パタリと鉛筆が止まってしまう。「オレならではの、しかも売り物っぽくないイカしたデザインって・・・」
むむむ・・・ムムム・・・むむむ・・・ムムム・・・
・・・で、気が付くと夏が過ぎ10月も11月も終わり・・・今年もあと10日程で終わってしまう!→でも年賀状全く出来てない!!→クライアントにも渡す結構大事なアイテムなのに!!!→超ピンチ!!!! となっちゃうのです!!!!!
これが《実録!「紺屋の白袴」》なのではないかと思いますっっっっ。
という訳で皆さん、来年も元日には年賀状がお届け出来ないと思います。スミマセン!