折衷ラプソディ

装丁案のラフデザインを3案出すと必ず「A案のこの部分とB案のこの部分とC案のこの部分を合体した折衷案で」と言ってくる担当編集さんがいるのだが、今回は提出時に「A案のこの部分とB案のこの部分とC案のこの部分を合体した案もご用意できますがあえて作っていません」とメールでメモとして書いておいたら「ではそれにしてください」と返信が来て超笑った。
「では、最初からそういう案を作れば良いのでは」というご意見もあるかと思いますが、それは無理なんですね。このタイプは何をどう絞り込んだ案を作っても単案は満足せず、複数案の中から「自分が良いと思った部分」を合体させることがアイデアだと思っているのです。
「では最初から一つのアイデアを3分割すれば良いのでは」というご意見もあるかもしれませんが、アイデアを3分割しても3分の1の労力になるわけでなく、それぞれの3分の2のパーツは新規に作るのですから同じことです。
ただ今回の防御策テクニックとして3つの案の各ユニットを組み替え可能なデザインとして設計したということはあります。ただ、これは最初から組み替え可能なデザインになっている分、一見選ぶ側の自由度が効くようで、作る側の設計の自由度がなくなるので、その書籍ならではの面白みのあるデザインは難しくなります。
年賀状や名刺がテンプレートになっていて好きなイラストやフォントを組み合わせてつくれば「あなただけのオリジナルが作れる」と謳う印刷サービスのようなもので、だいたい出来上がりはどれも似たり寄ったりになるのです。