「界隈」を創り出す

どうしても引き合わせたいアーティスト夫婦同士がいたので、都合をつけて会ってもらう事にした。一方は独自のスイーツ店を軸に創作活動するアーティストとそのマネージャー夫妻、もう一方はジャンルを横断して世界中を駆け巡る尺八奏者とアイリッシュ・ハープも奏でるチャーミングな箏奏者の夫婦だ。
ここの所ずっと彼らの活動を見ていたボクは「それぞれジャンルは違えど、持ち得る感性は共通するのではないか」と前々から感じていたのだが、初対面ながら二組は意気投合(ボクとemixを入れれば三組なのだが)。ついつい話が弾み、お伺いしたスイーツ・アーティスト宅のアトリエに予定をオーバーして長居してしまった。
そして話すうちに共通の知人や話題が現れ始めた。やはり! そう、「やはり」なのだ。惹かれ合う感性の持ち主同士というのは感性のベクトルが似ているため、友人知人などの人脈やチェックしているイベントや話題が重なるのだ。そしてそれが繋がった時、一挙に距離が縮まる。そうやって繋がっていくネットワークをボクは「界隈」と呼ぶ。
ボクが生業としているエディトリアルデザインは、テキスト・フォトグラフィ・イラストレーション・タイポグラフィを融合させ、読み手の心にスッと入る様にコーディネートするスキルである。云わば「界隈」を味わってもらう仕事だ。ところが限界もある。エディトリアルデザインは視覚に限定される。
ボクは視覚のみならず、聴覚・触覚・味覚・嗅覚を魅了することが出来る才能と感性を融合させて、輝く才能の「界隈」をもっと皆さんに味わって欲しいと思っている。
そういう「界隈」を創り出し、皆さんにお届けするのも、大きな意味で《デザイン》だと思っている。