歌舞伎町のクロガネーゼ

バストロンボーン奏者の黒金寛行さんが4月からベルリンに留学されてしまい、奥様のファゴット奏者の垣内紀子さんも一緒に行かれるというので、その前に一度美味しいモノでも食べに行こうと前々から約束しておりまして、ボクの必殺技(と言っても外囿さんのウケウリ)である新宿は歌舞伎町の老舗スペイン料理屋「カサベリヤ」で舌鼓をポンポコ打って参りました。

出る料理がイチイチ美味過ぎて説明するのも面倒なので、この部分はemixの日記を読んで頂くとしましょう。それよりボクは、職業も出身も学校も全く違う才能溢れる若い二人の友人と、こうして食事をしながら色んな話が出来るファンタスティックな時間への感謝を、ここに綴っておこうと思います。
今となってはボクと縁深いお二人ですが、きっかけは本当に些細なきっかけでした。黒金さんとのお付き合いはKOSEIレーベルからリリースされた4 Bone Linesというトロンボーン・カルテットのアルバムデザインをボクが担当させて頂いた折に彼がメンバーとして参加していたことに始まります。
当時の黒金さんは多くの音楽コンクールを制した実力者であったものの、まだ東京藝術大学を卒業するだかしないだかの頃でNHK交響楽団のアカデミー生だったと思います。他のメンバーである村田陽一さん、古賀慎治さん、池上亘さんの後ろの方で大人しくニコニコしていたのでした。
またその頃、ボクはユーフォニアム奏者の坂上知佳子さんのリサイタルのデザインをお手伝いさせて頂いており(彼女とも不思議な縁で、まだ彼女が音大一年生の頃に外囿さんのお弟子さんとして偶然紹介され、その後も外囿さんのアシスタントとして何度か顔をあわせていた)、彼女から「大の仲良しである先輩のカレシが黒金さんで、ワタシも仲良くさせて頂いている」という話をよく伺ってましたので、黒金さんには何ともいえない親近感を持っていました。
そういう訳で黒金さんに「リサイタルとかする時は声掛けて下さいねー」とラブコールを送っておりましたら数年後に実現しまして、色々と相談させていただきながら仕事を進めるうちにさらに親しくなっていきましたし、その後も彼の目覚ましい活躍を我が事のように嬉しく思いました。
そして暫くして昨年、彼から「今度結婚することになりまして、その妻となる人の名刺を作って欲しいんです」という相談を頂き、本人とお会いすることになったのですが、その方こそ坂上さんが「大の仲良し」と言っていた先輩である垣内さんだったのです。もうね、彼女も他人とは思えなくて。
で、結婚披露宴のときには何か作らん訳にはいかんだろと思い、出来上がったのが雑誌風二人のプロフィール・パンフレット「Basso Japon」です。

何だかこの冊子、クラシック業界を騒然とさせたらしく(笑)、中には本当にお二人の結婚が雑誌に取材されたと勘違いされた方もいらっしゃったり、披露宴に出席されてない方から今でも「欲しい」というリクエストがあるのだそうです。いやぁ、デザイナー冥利というか、友人冥利に尽きます。シテヤッタリ!
本日の会話の中でも「好評なので第二号は年賀状ついでに《ベルリン便り》として出したいですっ」という話となり、じゃぁ次の打ち合わせはベルリンのビアホールでということになりました(なので名目上は出張取材)。いや、冗談抜きで行きたいです。
出会いというのはひとつひとつが奇跡だと思っています。そしてその多くは自分というより支えてもらっている多くの友人知人の力添えで成り立っています。これからも新鮮かつ感謝の気持ちを持って日々を過ごしていこうと思います。