ノワール・オール(Noir Or)の凱旋


濃霧の常磐道をひたすら北上して、いわきアリオスへ。黒金寛行*1さんの故郷でのリサイタル。
ロビーでは彼の両親が、ゆかりの方々が現れる度にお出迎えし、丁寧なご挨拶を繰り返している。もう披露宴状態。この若さにして得た数々の賞歴と、この若さにして得た誰もが羨む有名オーケストラの席をひっさげての息子の凱旋公演、さぞや嬉しかろう。客席は満員。地元から生まれたクラシカル界の若き才能を一目見たい(聴きたい)と期待が高まる。会場では久しぶりにユーフォニアムの坂上知佳子さんに再会。彼女の勤務地がまぁ近いといえば近いのと、黒金さんとマブダチってことで駆けつけてくれたらしい。友情。
演奏は素晴らしいの一言。キャパシティの大きさ、音色の豊かさ、揺るぎない丁寧で高度なテクニック、説得力と自信に溢れた音楽・・・朴訥で穏やかな彼のキャラクターのギャップとも相俟って、けして地方の公演としては平易ではないプログラムを、時が経つのを忘れてしまうくらいウットリと聴かせてしまった。アンコールは日本の故郷をモチーフにした唱歌のメドレー。彼の師匠である秋山鴻市さんの思いと、彼を育んだ地元いわきへの感謝の思いを込めた演奏に、思わず目頭をおさえる方が多数。愛されているなぁクロガネくん。
彼にとっては等身大であろうが、初の本格的なリサイタルとはとても思えない堂々とした演奏に、10年に一度出るか出ないかの逸材であると再確認し、一緒に仕事が出来たことの幸運を噛み締めた。同時に、世界のクロガネとしてさらにスケールアップしていくべき、彼への仕事への一助となるべく、これからも支えていければと思った。
写真はパンフレットの表紙で使用したもの。岡崎正人さん撮影。
ところで同行してくれたemixに「今日はデザイナーとしてでなく、一人の超ヘタレなバストロ吹きとして、勉強のつもりで聴きなさい」と諭される。泣く。

黒金寛行バストロンボーンリサイタル
黒金寛行(バストロンボーン)/小松祥子(ピアノ)
 
いわき芸術文化交流館アリオス音楽小ホール(別館1階)
2010年4月5日[月]18:30開演/18:00開場

●演奏曲
 プレリュード、エレジーとファイナル/ダマーズ
 ソナタ ヘ長調/アルビノーニ
 コンチェルト・アレグロ/レベデフ
 バラード/エワイゼン
 ソナタ・ブレーヴェ/ハートレー
 幻想協奏曲/カステレーデ
 ソナタ/ギリングハム
 アンコール:日本のふるさとの歌メドレー*2

 

*1:くろがね・ひろゆき:1985年、福島県いわき市生まれ。県立磐城高等学校を経て、2004年東京藝術大学入学。2006年8月、韓国・済州島にて行われた国際コンクール、第4回済州ブラスコンペティションにおいてバス・トロンボーン部門第1位、およびグランプリ受賞。同年11月、第23回日本管打楽器コンクール、トロンボーン部門第1位。東京藝術大学在学中に安宅賞を受賞。モーニングコンサートに出演し、藝大フィルハーモニアとE.エワイゼンのバストロンボーン協奏曲を演奏。2008年、東京藝術大学を首席で卒業。アカンサス音楽賞を受賞。新卒業生紹介演奏会に出演、藝大フィルハーモニアとJ. ウィリアムズのバストロンボーン協奏曲を演奏。N響アカデミーを経て、現在NHK交響楽団バストロンボーン奏者。これまでにトロンボーンを秋山鴻市、古賀慎治の両氏に師事。

*2:タイトル未確認:分かり次第載せます。