ずっと考えていた

『中川いさみのマンガ家再入門』(2016/05/12)
【第17話】 鴻上尚史、再び登場! 「創作がガラッと変わった95年という年」

 
僕がずっと考えていたこと、鴻上尚史さんも中川いさみさんも考えていた。
1990年代に入ってバブル崩壊して95年に阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件がやってきて、21世紀になったと思ったらアメリカ同時多発テロ事件からのテロ組織(というレッテルを貼られた人々)との戦争が始まって、リーマン・ショックが起きてまた不景気になって、東日本大震災が起きて原発が吹っ飛んで、政権がひっくり返って、海の向こうでテロ組織に日本人が捕まって殺されちゃったりしてワタワタして、熊本で地震が起きて。。。
そう、彼らが言うように世の中はその前だって十分不条理で大変なことだらけだった。けど、経済的にかなりウェーイな感じのところまで行って良い気になってた日本人が1995年前後から「あれれ」みたいなカウンターパンチとしてそれらの事件に次々に遭遇していった。理解する前に次のパンチがどんどん来るもんだから、とうとう足にキてしまった。
で、どんどん日本人が疑心暗鬼になって、難解な表現とかブラックジョークとかエロティシズムとかストレスに関する凡ゆることが不謹慎だと叩きのめされ、他人の失敗は許さず、代わりに分かった気になるイージーな解説と感動の押し付けと溜飲を下げる罵詈雑言を求めるようになった。出た杭がちょっとでも錆びると寄ってたかって打つというより引っこ抜いて棄てるようになった。
彼らも含め、僕は表現を仕事にしているが、クライアントや自分が世の中に対してアウトプットしたいものと、実際受け止めてくれるアウトプットの形をどうするか、という狭間で日々悩み続けているわけで、こういう時代になっても、でも、こういう仕事をしているからには悩むことをやめるわけにはいかず、日々悶々としながら机に向かってゴシゴシ作り続けております。