都会の動物園

会社の窓からビルの解体工事が見える。危険なものが周辺に飛び出したりしないようにパネルで囲まれたそれは、何だか動物の檻だ。
その檻の中で結構な数のメカキリンが首を伸ばしたり縮めたりしながら忙しくしている。操縦室にはきっとオペレーターが乗っていて、大変優秀な技術で作業をされていると思うのだが、ボクにはどうしてもエサを食べてるようにしか見えない。
「ほらサンボや、もっとよく噛まなきゃダメじゃないの。パパを見なさい、コンクリートはあぁやって食べるのよ。」
「でもママ、古いコンクリなんて、ちっとも美味しくないよ。しかもこれ、アスベスト混じっててなんだかザラザラするぅ。」
「好き嫌い言ってるんじゃないの。お兄ちゃんなんか、文句言わずに食べてるじゃない。」
「そう言って、いっつも兄ちゃんばっかり贔屓するじゃないか。ホントは兄ちゃん、ママの見えないところでコッソリ外に捨ててるんだよ。」
「なんだとコイツ! 嘘ばっかりつきやがって」〈バシッ!〉
「ア〜ン、ニーチャンガブッター!!」
「こら! 喧嘩はやめんか!! いい子にしてないと、飼育員さんに新しいキャタピラ買ってもらえんぞ。」
「わ〜ん、ごめんなさーい!」
きっと、そんな暢気な仕事ではないと思いつつ・・・