鳥獣VIVA!

サントリー美術館へ「鳥獣戯画がやってきた!」展を観に行く。世界最古の長編ギャグ漫画が国宝だなんて、つくづく日本という国を誇りに思う。
高山寺の原本「鳥獣人物戯画絵巻(甲乙丙丁)」は勿論素晴らしいが、これを元に作成された写本や、インスパイアを受けたトリビュート作品、周辺のギャグ作品は非常に衝撃的だった。狩野探幽の写本は原本とは違った上手さがあり、是害房版はまるでグリム童話、明治初期に描かれた田崎草雲版なんか与謝蕪村のように牧歌的でホンワカしてしまう。
勝絵絵巻や放屁合戦絵巻なんか昔でいうと「トイレット博士」、今でいうと「でんぢゃらすじーさん」級の馬鹿馬鹿しさと下品さに溢れた快(怪)作だ。もうウンコチンチンのオナラブーブーなのだ。何にも考えずに笑える。だって絵が面白い。
高山寺原本に話を戻すと、12世紀の時点で現代漫画にも出てくる技法「顔の表情の記号化」「効果線」「擬人化」などが出揃ってしまっている事実も興味深い。これらは漫画の読み手も「お約束」として熟知していなければ成り立たない技法であり、当時から読み手も育っていた証拠である。つまり日本人はもうかれこれ800年も漫画を読み続けているのだ。
また、ひとつひとつのキャラクターを取り出してもイラストレーションとして成り立ってしまうあたりはピーナッツを描いたシュルツの作品と同等の完成度である。
実はもう一度観に行く。今は長い絵巻のそれぞれ前半部分しか公開されていないのだ。会期中の後半に残りの部分が見られるのだ。例の蛙と兎の相撲も後半部分。今から待ち遠しい。