指切り家族

父親に誕生日祝いの電話をするつもりだったのに、気がついたら10時を回っていた。
もう寝ているだろうなと思いながらも電話をすると案の定、母親が出た。いつもの様にテレビを観ながらウトウトしていたらしい。父親はケーキ食ってさっさと寝てしまった。
そっちは元気かと言うと
「おかあさんねえ、左の指先8ミリくらい切り落としてしもうたんよ」
!!!ッ!。いつの間にウチは極道に!?
訳はこうだ。何だかビニール袋を包丁で切り開けているときに手元が狂って切り落としてしまったそうだ。パニックになりながらも止血し、慌てて病院で引っ付けてもらって事なきを得たのだが、歳なので治りが悪い。
「押さえるとねぇ、痛いんよ」
そりゃそうだ。一回すっ飛んだんだから。
ボクも似た経験をしたことがある。まだ結婚する前、ある夜、emixの家でサラダを作っていて、スライサーでタマネギと一緒に指先までスライスしてしまった。チリソースをかけたように真っ赤になったサラダボウルを見て卒倒したのはemixの方。当時はまだクルマがなかったので後輩に電話して救急病院へ連れて行ってもらった。
「タマネギを指先で押さえた状態で切ったろ、だから傷口がすり鉢状に凹んでたよ」
「へー、面白いスねー」ハハハハー。
と処置後、後輩とロビーで話していると
「笑い事じゃナイ! オトコって何でそうなの!」
とemixと後輩の彼女の両方に涙目で叱られた・・・
 
「おっちょこちょいはウチの家系じゃけぇ、気ぃつけんさいよ」
とボクがいうと、
「先生は歳じゃけえって言うとったわ」
先生、それは誤診だ。親戚や友人からサザエさんの称号を戴く人なのだ。案内看板を見ながら丁寧に辿っても、目的地と真逆に進める人なのだ。亀を冬眠させようとして鉢を被せて埋めてしまった人なのだ。
えっと、何の電話だったっけー、これ。