サクバットの決意

テューバ&セルパン奏者の橋本晋哉さんから宮下宣子さんのアルバムを購入して聴いております。これが大変よろしいのでございます。
サクバットというのはトロンボーンの古い呼び名というか、祖先というか、古楽器なのですが、素人目には現代のトロンボーンと殆ど変わりません。ちょっとベル(朝顔)がちっちぇーかな、くらい。トロンボーンは生まれてきたときから目立った進化もせずここまで来た楽器なのです。メタセコイアみたいなもんです。
でもでも、サクバットは現代のトロンボーンのような大音量は出ませんし、音域による音質も一定ではありませんが、音色がなんとものどかで、高音はつややか。元はトランペットと同じ楽器だったんだなと実感させてくれる独特の味もあります。
これはそんなサクバットの魅力をたっぷり伝えてくれるアルバムです。
ええと宮下さんは日本の女性トロンボーン奏者の草分け*1なのですが、この度は日本人初のサクバットのアルバムを出すという快挙を成し遂げられました。まさにクイーン・オブ・パイオニアです。
また、脇を固める演奏家の方々が素晴らしい。日本の西洋古楽器演奏の第一線で活躍されている方たちばかりです。チューバの鬼才・橋本さんはセルパンの演奏ではじめて録音したアルバムだそうですよ。

サクバットの決意 A SACKBUT'S RESOLUTION」 (EZCD-10005)
 
宮下宣子(サクバット)、濱田芳通(コルネット)、西山まりえ(バロック・ハープ&レガール)、矢野薫(オルガン)、橋本晋哉(セルパン)
 
01.「兵士の決意」(トバイアス・ヒューム)
02.「別れのときに」(チプリアーノ・デ・ローレ/リッカルド・ロニョーニ)
03.「愛しい人よ」(アンドレア・ガブリエリ/ジョバンニ・バッサーノ)
04.「爽やかなガリヤルド」(トーマ・クレキヨン/ジョバンニ・バッサーノ)
05.「麗しきかな」(ジョバンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ/フランチェスコ・ロニョニーニ)
06.「バルバラ・ストロッツィの「秘密の恋人」を基にしたパッサカリオ」(濱田芳通)
07.「2声のためのカプリッチオ」(アンドレア・チーマ)
08.「若い娘(フランス古謡)」(濱田芳通)
09.「コレンテ第26番」(バルトロメオ・デ・セルマ・イ・セラベルデ)
10.「2声のためのカンツォン第26番」(バルトロメオ・デ・セルマ・イ・セラベルデ)
11.「幻想曲第9番」(ゲオルグ・フィリップ・テレマン)
12.「夕べの祈り」(ヘンリー・パーセル)
13.「チェロソナタ第6番」(アントニア・ヴィヴァルディ)

タイトルを押していただくとamazonでも買えますが、橋本さんのサイトから購入されるとお得ですよ。
いま、もっとも新鮮な音楽は古楽だと豪語してもいいです。ブラスアンサンブルの原点も聴けるこのアルバム。是非是非お試しあれ。

*1:宮下宣子:東京芸術大学及び同大学院修士課程修了。在学中、安宅賞受賞。文化庁海外派遣研修員としてケルン音楽大学に留学、最優秀で卒業。第1回モーリス・アンドレ国際コンクール、アンサンブル部門入選。第49回毎日新聞社NHK共催音楽コンクール金管楽器部門第3位。大学在学中より日本オーケストラ界初の女性金管奏者として、新日本フィルハーモニー交響楽団に入団、現在に至る。フェリス女学院大学非常勤講師。モダン・トロンボーンを伊藤清、ブラニミール・スローカー。サクバットを飯塚睦彦、ダヴィッド・ヤークス、キャサリン・モトゥーズ、シュテファン・レジェー、フランク・ポイトゥリヌ。古楽を濱田芳通各氏に師事。また、東京ヒストリカルブラスのメンバーとしてテナーホルン、バスフリューゲル、ナチュラルトランペットやクラシカルトロンボーンなどを駆使して、作品のオリジナル性を生かした活動も積極的に行なっている。