YSEM

写研*1の書体の中にYSEMというのがありまして。新聞特太明朝といって、名前の通り新聞の見出しで使われている書体を写真植字化したものなんですけど、ボクがデザイナーの駆け出しの頃大好だった(今も好き)書体でして。SHM(秀英明朝)もネチッとしてて良いのですが、YSEMの渦巻くような仮名の不安定感が何とも言えないバランスで、キチキチと詰めて使ってたんですね。

でもDTP全盛になって、独自のシステムにこだわった写研の書体はDTP上でのデジタルフォントの開発をいち早く手がけたモリサワに大きく水を開けられ、デジタルフォントはパソコンでデザイナーが自由に扱える利便性もあって、ボクたちも普通の仕事では写植システムはあまり使わなくなっていきました。最近は写研の系譜を汲む質の良いDTP用のデジタルフォントも増えています。
で本日、知り合いのカメラマンとニューオータニでお茶してて、レジの傍らに読売新聞の「鳩山首相退陣」の号外があったので、まじまじと見たらアラ懐かしのYSEMがって、YSEMのYSって読売新聞のことですから、当然と言えば当然なのですね。ただしこちらは正確にはYSEMではなく、読売新聞の専用見出し明朝体*2です。しかし、ギョッとしたのは次の瞬間でして。

号外だから本文も大きいのですが、本文も見出し明朝で組まれていました。
しかし、「」とか約物*3がアリエナイくらい小さい。
昔の東アジアの輸出用お菓子や電化製品のパッケージで見かけた、見よう見真似で仮名と約物だけつくって無理矢理中国語の書体と合わせて組んだ文章みたい。ある意味ラブリー。
n-yujiくんによると、見出し専用書体なので約物は元々全角用に作られてないのでは、とのコメント。確かになーとは言え、読売新聞だっていまどきデジタル化されているんだろうから、太めの本文書体を開発するとか、本文使用の可能性を見越して見出し明朝に全角約物を加えるとかしとけば良かったのになーと、大新聞社だけにチョイと残念な気持ちになりました。

裏面は英文で組まれてて、貰ってきたのもインターナショナルな雰囲気のニューオータニだったので、海外の滞在先で日本人向けに配られた号外みたいで、エセ海外旅行気分を味わえて、それはそれで楽しめましたが。
って、既に内容読んでない〜。

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/写研

*2:しかしこれも、原型があります。詳しくはこちら

*3:文字の記述で使用する文字以外の記号類。句点や句読点や括弧(、。「」)など。普通は発音しない