フォルム

ふと、通勤電車から外を見遣ると、鳥のつがいが平行して飛んでいた。スッと首が伸び、形の美しい翼を規則正しく羽ばたかせながら颯爽と。最初、彼等の大きさが判らず、随分大きいのかと想像していたら、近くのマンション群より手前を飛ぶので思いの外小さい。
暫く電車とほぼ同じスピードで高度を上下させながら小気味よく飛んでいたが、やがて着陸体制に入るために前屈みになり、橙色の可愛らしい水掻きのついた脚が空気にブレーキをかけるかの如く現れるに及んで、このカップルが鴨であることに気付いた。
普段気持ちよさそうに川面から顔を出している石ころの上でズングリと日向ぼっこをしている、お風呂の玩具の如く水面をクルクルと泳ぐ彼等とは違うフォルムの変化に感動すら覚える。
その場に応じて最も適したフォルムに自分を変形させる。その有様こそが、種の個性を決定づける。我々デザイナーの仕事も同じではないだろうか。そう思った。