向日葵

航空自衛隊航空中央音楽隊のパーカッショニスト・宮嶋貴哉さんは、震災から一ヶ月後に松島基地と周辺の慰問演奏と小中学校の入学式の演奏支援に訪れた際、同僚の勧めもあって、音楽隊の園芸部で育てた向日葵の種を5粒ずつ、メッセージとイラストなどを書いた封筒に入れて600袋持って行ったそうです。
生活物資でさえ不足気味の中、育てるのも一手間かかる植物の種なんか最初はもらって頂けないかと思ったのに、皆さん喜んで受け取って下さったそうで、無事にこの夏、沢山の向日葵の花が咲いたとのことです。
つい最近も9月蒔きの種を700袋送ったところで、松島基地の売店で配布してもらっているそうです。
音楽と緑を届ける音楽隊。とても素敵な話だと思います。
かつて防衛大学卒業式の訓示で吉田茂元首相は卒業生にこう語りかけました。

君たちは、自衛隊在職中決して国民から感謝されたり歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。ご苦労なことだと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは外国から攻撃されて国家存亡のときとか、災害派遣のときとか、国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ。言葉をかえれば、君たちが『日陰者』であるときの方が、国民や日本は幸せなのだ。耐えてもらいたい。
昭和32年2月防衛大学校第1回卒業式 吉田茂総理大臣訓示

東日本大震災や原発事故だけでなく、新燃岳噴火や先日の台風などの災害派遣活動で、まだまだ暫くは自衛隊が最前線で『日向者』として活躍せざるをえない事態が続いています。
宮嶋さんや音楽隊の「日向は自衛隊でなく、国民や平和な国土であってほしい」という願いが、この松島の皆さんに送られた向日葵に込められているような気がしてなりません。