老舗の味、それぞれ。

カナディアン・ブラス-テイクス・フライト(Takes Flight)

カナディアン・ブラス-テイクス・フライト(Takes Flight)

カナディアンブラスといえば1970年結成の老舗金管五重奏団です。ボクは子供の頃からヘヴィなブラスアンサンブルファンですが、中学生当時はフィリップジョーンズ・ブラスアンサンブル(PJBE)よりもエンパイア・ブラスよりも・・・アメリカン・ブラスクインテットなんかも大好きだったんですが、断然カナディアンブラス派だったんですね。高度な音楽性と芸術性とユーモアを同時に併せ持つ金管五重奏団はほかにないと思ってました。
時が経つにつれ、多くのブラスアンサンブルが解散したり活動休止したり大幅にメンバーを変えたりする中で、例外なくカナディアンブラスもメンバーの変遷がありました。初中期でもホルンのグレーム・ペイジからマーティン・ハックルマンに、そしてダヴィッド・オハニアンに変わったということがありましたが、他の4人は割と長く同じメンバーだったんです。しかし結成から40年以上が経って、現時点ではリーダーでテューバのチャールズ・デーレンバック以外の4人がすっかり若手に変わっています(リンク先のHP参照)。
それで、2012年にこの若手4人とチャックの新体制による初のアルバムが発売されたのですが、内容は新曲と共に過去からカナディアンブラスが初期のレパートリーにしていたお馴染みの譜面(小フーガ/ラ・クンパルシータ/セインツ・ハレルヤ/テューバ・タイガー・ラグ/ジャスト・クローサー・ウォーク など)も入っています。つまり団体としては再録音なんですね。
メンバーの8割が新しいのだから普通は全く違うアンサンブルな、はずです。ところが、です。サウンドも歌いも全く新しい、技量だって世界的な金管楽器奏者の演奏レベルが向上していますから明らかに進化している・・・でもちゃんとカナディアンブラスなんですね。
これらの譜面を最初に録音した当時はそれぞれのキャラクターとサウンドでハッタリをかますくらいにワッと合わせていたところを、確かな技術でキチンとアンサンブルし、バランスを取り、同じ譜面でもフレージングやタイム感に改良を加え、指向性のしっかりした音楽に仕上げています。譜面は初期のレパートリーでありながら、アプローチはコルドベルクなどを録音していた2000年頃の円熟した丁寧な音楽作りを踏襲している。しかも最初期のユーモアは失っていない。音も若くて軽やか。
まさに若返ったカナディアンブラスが飛翔しつつあります。
 
ところで、ボクが日頃からお世話になっているオリパパ(織田準一さん)の所属する上野の森ブラスは1973年に結成されてから一度も一人もメンバーを変えず今日まで演奏活動を続けている世界でも希有な金管五重奏団です。そういう意味ではきっと世界最古かもしれないです。ギネスに申請してみてはいかがかと思いますが、アレ、けっこう認定してもらうのにお金かかるんですね。申請するくたいだったら新しいアルバム作った方がマシな感じです。こちらは円熟味がさらに素晴らしい味わいに昇華されていて、神懸かってます。来年は結成40周年なんだから、そろそろ作ればいいのに。
ブラスファンタジアI

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ブラスファンタジアII

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Morikin’s Stand

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