Tapsetry


村田陽一さんよりニューアルバム「Tapestry」が届いた。帯には「2006年から日記を綴るように作曲した曲の中から厳選した全13曲収録」とある。
2006年当時、ボクは村田さんがパーソナリティを務めるPodcast《ゴッド・ブラス・ユー》という番組が配信されていたのを欠かさず聴いていて「最近日記を綴るように作曲している」と話していたのを知っていたし、実際その中からいくつか曲をかけてくれていたのも覚えている。Podcastという『自分の好きな番組を探して聴く』ちょっと変わった配信システムのせいもあってか、村田さんが撮った写真をこっそりご本人に見せて頂いている様な不思議な感覚だった。その中から後にボクもアルバムデザインなどで参加させて頂いた 4 Bone Lines の作品群などへと昇華されていったものもあるけど、今回のアルバムはPodcastを聴いていたときのそれとほぼ近い気持ちで聴くことが出来た。なんというか、とても良い意味で原石のままなのである。
カッコ良く言ってしまえば、このアルバムは村田陽一版、音の《徒然草》である。村田さんは「特定の出来事や人物やモノについて書いた訳ではないので、出来た順に番号で整理してるんです」とコメントされているものの、曲毎にその時その時の思いの積み重なりが音を紡ぎ出しているファクターの大きな要因であることは間違いはないと思う。日記というもので大事なのは何を語っているかではなく、その時その時の気持ちの残り香なのだ(語っている事象なんて次の瞬間には変わってしまう徒然に移ろい行くものだから)。
それにご本人は「タイトルをつけるのがとても苦手」とは仰るけど、やっぱり絶妙なタイトルなのだ。そのタイトルに気持ちの残り香が纏わるのだ。
村田さんが撮った写真、といえば、このジャケット写真がまさにそうなのだという。2010年1月に村田さんはイヴァンリンスとのアルバム「Janeiro」を制作するためにリオデジャネイロに滞在された。「(この写真は)リオデジャネイロのコルコバードの丘へと続くケーブルカーの線路です。イヴァンリンス達とのレコーディングで滞在中の唯一のオフ日にキリスト像を見る為にケーブルカーから何気なく撮ったショットです。」(本人談)・・・誰から見ても日本が世界に誇るトロンボニストでありながら、この写真が語っているのは〈まだまだ道半ば、しっかりブレずに登って行こう〉という穏やかながらも力強い向上心である。
ところでこのアルバム、通常のCDショップでは買えないので、村田さんが出演するライヴに足を運んでいただくか、村田さんのブログから申し込むのが一番早い。