i君

i君という男は高松高校時代から破天荒なクセにクレバーで、頭脳明晰揃いのウチの教師陣以てしても太刀打ち出来ない諧謔さを纏った痛快かつ恐ろしい存在だった。そんなにインパクトがあるマスクではないけれど、驚異の筋肉の塊で、ボクが陸上部の顧問に何度もラブコールを受けても断ってきた理由のひとつに「日本一を目指す云々より前にiみたいなバケモノに勝てる訳なかろう」というのがあった。
そんな愛すべきバケモノがいよいよ東京から故郷の高松に住まいを移すというのでサッカー&ロック小僧のgen君から招集がかかり十名程が夜の新宿に馳せ参じた訳だが、i君は故郷に帰ってゲストハウスを開くのだという。彼はこれが同じ時間を歩んで来た人間かと疑うくらいの多くの国々を旅してきたのだが、その経験を元に、今度は彼の様に世界を旅する仲間を受け入れる側としてのオモシロさを追求して行こう、ということなのだと思う。ただ単に観光ホテルやペンションの経営がしたいという視点とはハナから違うのだ。
また、彼は写真が好きだと言っていたので、家に戻ってから彼のサイトを見たのだが、もう色んな意味で好きとかいう範疇を超えた写真たちだった。世界中の現実とガチで向かい合って来た男でなければ撮れない視点。温々と住まうことに幸せを求める誰もが無視してしまう現実が愛情と哀しみをもって映し出されている。
何と言うか、尽くボクの想像を超えている。
i君という男は高校時代から破天荒なクセにクレバーで、今も全く変わっていない。