性分

子供の頃からなのだが、頭のどこかにいつも「今はこんなことをやっている場合ではない」という思いに常に付きまとわれている。友達と会っていると「まだあの勉強が済んでいないじゃないか」、勉強していると「楽器の練習が疎かになっているじゃないか」、部活動を一生懸命やっていると「ちっとも絵を描いてないじゃないか」、絵を描いてると「全然友達と会ってないじゃないか」、友達と会っていると・・・といった具合。自分が今取り組んでいることにドップリ浸かることが出来ない。いつも目の前にあること以外の心配事ばかりしている。いつも何か自分は中途半端に放り出して何か別のことをやっている気分の中になる。
でも逆に《何もやることがない》という状態に尋常でない恐怖を感じる。これは、大学卒業間際に内定が決まっていた会社が倒産して、プータローのまま社会に放り出されて以来、特に感じるようになった。
そして、なんとかデザインの師匠に拾ってもらって以来、これらの強迫観念と恐怖に追われるように生きている。《何もやることがない》のは怖いし《何も済んでいない》のも怖い。どちらに転んでも怖いのだ。正直生まれてこのかた、心穏やかな気分というものになれた試しがない。いつも考えている。いつも怖がっている。いつも落ち着けない。
でも、これが性分だと思ってもいる。だからと言って、ツライわけではない。これはこれで結構楽しいのだ。