当日はヒマな仕事

ボクの仕事というのは仕込むことである。ある場所にいって、誰かのために何かを演じてみせたり、その場で何かを作ってあげることは、まずない。だいたい事前に仕込んでおいたものを、あるタイミングで誰かに読んでもらったり見てもらったり聞いてもらったりする。
だから、演奏会のデザインを手がけた場合、ボクだけ当日の仕事が済んだ状態で会場に足を運ぶ。仕事をするのはボクが作ったものであって、ボクではないのだ。なので無茶苦茶ヒマだ。すごくたまぁ〜に、アーティストさんにライヴで「ぼくらのCDやフライヤを作ってくれたデザイナーさんが来てくださいましたっ」てコールされて立って『てへへ』とかお客さんに軽く会釈することはあるけど、それ以外は何もない。彼らの仕事が上手くいくのを祈るだけだ。集っていただいたお客さんの満足な顔を見て安堵するだけだ。
しかし、それがすべて成し遂げられた瞬間を見届けると、他には代え難い幸福感に包まれる。
この仕事、またやろうって思う。