秘密基地

真夜中、ioriくんの新居をひやかしに行く。
なんと地下に金管10重奏が軽く入れる広さの完全防音のスタジオを作ってあるのだ。彼自信はオーケストラの企画を仕事にし、しかも趣味のラッパも素人の域を超した腕前とはいえ、音楽を趣味にする者からすれば羨ましい限りだ。
しかし、これは趣味で作ったアトリエではない。彼の奥様*1は在京オーケストラで活躍しているパーカッション奏者なのだ。
演奏そのものが商品であるプロの演奏家にとって練習環境の確保は最重要課題だ。加えて打楽器奏者は使用する楽器が大型な物も多く、管理や移動コストだけでも馬鹿にならない。
仕込みが完璧に出来る場所は何物にも代え難い武器だ。
iori夫妻やボクたちのような、創り出した価値感を人に見たり聴いてもらったりする事を生業にする者は、仕事とプライベートを分けて考えたりは出来ない。日常の中に仕事のヒントがあるし、100%の出来映えが出発点の仕事だから、いつでも仕込んでなければならないのだ。
例えばウチは借家住まいだが、デザインと譜面による音楽制作に関しては完全にプロフェッショナルにこなせる環境のアトリエをひとつ確保している。
デザイン制作に関してはこの部屋単体で事務所のクオリティーには到底及ばないものの、一般的なフリーランサー程度の設備は有しているし、音楽出版のジャンルになれば、寧ろ事務所より強力である。こういった環境は普段の事務所でのデザイン制作においても大変強みである。
こういう風に、人それぞれの用途や好みに合わせたアトリエは、ボクたちの力を支えてくれるし、夢が膨らむ。
それに子供の頃から誰でもそうであろうが《秘密基地》を持つこと自体、至上の喜びである。
そういう意味ではioriくんちのは地下にある分、秘密成分が強くてカッコイイ。

写真はスタジオ半分。楽器置き場からピアノがある方へ臨む。こちらを舞台として小さなリサイタルが開ける。