住谷美帆 Saxophone Revolution Vol.1

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住谷美帆さん(pf AKI マツモトさん)のリサイタルで印刷博物館グーテンベルクルーム、じゃなくてトッパンホール! この夏秋は体調不良や緊急事態宣言下でリアル鑑賞は控えていたのですが、先週やっとワクチン接種からの免疫獲得期間に至ったため、久しぶりに公演鑑賞に伺いました。
今回も公演デザインを担当させていただきましたが、マネジメントさんから「各所からクリムトみたいだって大好評でした」と言われて改めて見返すと、クリムトなるほどねー。自分では意識してなかったけど彼女の纏う女神っぽさ(とカメラマンの力量)がデザインを引き上げた好事例だと思います。
 
さて、公演は住谷さんの今後の音楽的展望を予感させる、それはそれは素晴しいものでした。サクソフォンという楽器が生まれ出た瞬間から持っていた個性と未来を拡張させるような、そんなひとときでした。
演奏面としては特に、ピアノの音色と管楽器の音色が渾然となってどちらの音がどちらなのか聴き分けができなくなるハーモナイズやフレーズの入れ替わりを体験できた公演はそうそうありません。ものすごいシンクロ率です。彼女たちであれば第七使徒イスラフェルをユニゾン攻撃で瞬殺でしょう。
また、サンバという独奏曲で、循環呼吸で一分半くらい延々と高速スケールを吹く箇所があるのですが、紡ぎ出されるスケールラインの綾から和音進行が可視化される(バッハのような分かり易い分散和音でないのに)という稀有な体験をしました。スラップタンギングなども効果も抜群で独奏なのに一人に聴こえません。
なんなのでしょう。二人なのに一人に聴こえたり一人なのに分身したり。クノイチなのですか。

先日のショパンコンクールといい、日本のクラシックシーンは、明らかに若い力によって次のタームに入りました。彼らの才能が至るところでスパークし共鳴しています。コロナ禍でまだまだ油断のできない世の中ですが、人は明るく力強く進んでいけることを実感しました。
そして、明るい未来は若者だけでは創れません。彼らの無垢で溌剌としたパワーを活かすのは先に歩くものの努めです。中堅はもうちょっともがかなければならないかもしれない、ベテランは己の力を見限ってはいけない。プルス・ウルトラ!