神田川

打ち合わせで水道橋へ行った。ちょっと早く着いたのでプラプラと東京ドームの方へ歩いてたら思わぬところから非常警告灯の赤いランプが点滅しているのが目に入った。神田川の中だ。東京消防庁のダイバー船が向こうの橋の下に作業に入ってるのが一隻、ボクのいる橋の手前で待機しているのが一隻いる。ピリピリした空気が張り詰めている。
そうか、昨日の不幸な雑司ヶ谷の下水道事故の被害者の一人が見つかった場所って、まさにここだった。
コンクリートに固められた大都会では一見想像すら出来ない、しかし暗渠だらけの大都会だからこそ起こった、大量の雨水に人が押し流されるという自然災害。
ここのところの東京の夏は、熱帯のスコールとも言うべき異常な雷雨が頻繁に起こっている。この突発的な雨自体が首都圏の極端な都市化、つまり安直な利便性のためにすべてをコンクリートで固め、見栄えの良い植物だけを植え、クルマやクーラーの効いた部屋で過ごし、猛烈にビジネスを展開している我々が生み出した熱や二酸化炭素や水蒸気が原因の一つであるならば、明らかに人災である。大都会が発した大量の水は地面に吸収されることなく下水道に注ぎこまれる仕組みだ。彼らはその下水道をメンテナンスする仕事をしていたのに、その都会のしくみ自体が牙を剥いた。なんとも皮肉だ。
亡くなった方のご冥福をお祈りすると共に、行方不明の方の安否がとても気にかかる。
そして少しでも飲めば下痢どころか死んでもおかしくないような臭い夏の神田川に潜り捜索を続ける東京消防庁のダイバーの方々を始め、関係各位の尽力に感動と感謝を感じる。
皆の努力を無にするような街にはしたくない。
もうすぐ夕暮れ。神田川の川面にはビル群とどんより雲が映っている。また一雨来そうだ。