師匠


ボクは自分でも信じられないくらいトロンボーンがヘタクソなのだが、師匠だけは一流でその名を箱山芳樹という。いつもヘヘヘッと照れ笑いしているが、多分オケのトロンボーンプレーヤーとしてもソリストとしても世界で指折りの腕前を持っている。だけど、ちっともそういう素振りを見せない謙虚な人だ。そしていくつになってもチャレンジングだ。安定より創造性をもってオケを移籍し、次世代の中堅・若手とアンサンブルを組み、そしてこうして野心的なプログラムでリサイタルを開く。場所はドルチェ楽器管楽器アベニュー東京店・アーティストサロンDolce。
「お弟子さんたちに師匠がウンウン苦しんでいる姿を見せようと思ってね」とは言っているものの、会場にはプロのプレーヤーの方々も多く見え満席。それだけ業界内でも一目置かれており特別な存在だということだ。ボクは師匠様に頼んでなんとか直前で一枚確保していただいたのだ。
箱山師匠の素晴らしいところをヘタッピーなボクがいくつ並べても陳腐なだけだが、とにかくその表現力とそれをささえる技術力の幅の広さに尽きる。先日の内田光子&ヴィヴィアン・ハーグナーのときも感じたことであるが、音楽の大きさというのは全く編成によるところでなく、その人に内包されているものなのだ。そしてどんな単純な音ひとつにも歌がある。
これからデザイナーとして独り立ちしていく自分にとっても指針となる演奏会だった。もうトロンボーンのレッスンは受けていないし、職業も全く違うけれど、いまだボクにとって目標の師匠である。

箱山芳樹トロンボーンリサイタル2010
日時:2010/12/3(水)19:00開演
場所:ドルチェ楽器管楽器アベニュー東京店
   アーティストサロンDolce
出演:箱山芳樹(トロンボーン)、高良仁美(ピアノ)
曲目:
   ワーゲンザイル / 協奏曲
   ベソッツィ / ソナタ
   エヴィゼン / ソナタ
   ホーザー / ロマンス
   ストヨフスキ / ファンタジー
   ケンツビッチ / バラード
   デューハースト / ブラジリア
   コッホ / モノローグ第8番
   ヒュルガーア / 北の協奏曲
(12/8の大阪公演が終わってないのでアンコールは書きません!)