独立宣言

先ほど、1995年の3月末から実に16年お世話になってきた事務所での最後の勤務が終わり、自宅に戻って参りました。
思えばその春先、就職が決まっていた製版会社が入社直前に倒産したことから全てが始まりました。大学の部活動の春合宿から帰ってくるなり、そういう連絡を受けて入社するはずの会社に急ぐと工場は止まっており、オフィスは書類が散乱し、門には何やら沢山貼り紙がされていました。それで動転して当時アルバイトに通っていた雑誌の編集プロダクションに駆け込んで泣きついたところ、今のデザイン事務所を紹介してもらいました。海のものとも山のものともつかぬトンチキな大学生でしたからアルバイトとして何とか潜り込ませてもらった次第です。
元々デザイン事務所や出版社を希望していたボクですが、有名国立or私立大学卒でも美大や専門卒でもないのでナカナカ思うように行かず、当時人気だった大手ゲーム会社に決まりかけたりもしたのですが希望ではないので蹴ってみたり*1ジタバタしているうちに不況も手伝って一留し、次の年にちょっとでも出版に近い所と思って受けたのがコミックの仕事なども多く請け負うその製版会社でした。遠回りして辿り着こうと思っていた道が、卒業間際で一気に近付いたのです。
とはいえ、右も左も分からぬ四大卒のド素人。写植? トレスコ? 級数? トンボ? CMYK? Macって食べ物? みたいな状態でしたから、ボスに怒鳴られながら毎日ヒ〜ヒ〜とマジ泣きして仕事していました。とは言え夢にまで見たデザイナーへの道の尻尾を掴んだのですから楽しくて仕方ない。ちょうどDTPの黎明期、一日に10ペンは落ちるMacと戦いながら猪突猛進で仕事をしてたらアッという間に1年経ち5年経ち、21世紀になり、さらに10年が過ぎました。
まさに光陰矢の如く、出版不況と言われる現代ですが、DTPからWEB〜そして電子書籍へと時代のトピックが巡っても、今こうして出版の世界で色々な仕事をさせていただけるようになったのは、師匠であるボスは勿論のこと、著者やアーティストの皆さん、各クライアントの担当編集の皆さん、いつも協力いただいてきたイラストレーターやカメラマンなどの皆さん、そして一緒に働いてきた事務所スタッフの皆さんのおかげだと思っています。大きな感謝、感謝です。
何者か分からなかったボクは、皆さんのお力添えあって、今やっと堂々と「デザイナーです」と誰の力も借りずに言えるようになりました。何とか独り立ち(emixと二人三脚ですが)出来そうです。
これからは全てが自分の責任で進まねばなりません。準備は万端とは言えませんが覚悟は出来ています。
それが16年という時間で培ってきたものだと信じて。

*1:今でも蹴ったことは後悔していない。だいたい今でもゲームしないし