第50回


埼玉大学吹奏楽部第50回定期演奏会に伺ってきました。私が大学1年の時に第26回ですから、実に四半世紀という時間です。つまり私が大学に入学したときには現在の部員の誰もが生まれてすらいない訳ですが、良くも悪くも妙にマジメで羽目を外せない遺伝子はずっと受け継がれているのだなぁと思いました。
さて先日の演奏会は、 松元 宏康さんを音楽監督・常任指揮者にお迎えしての最初の定期になった訳ですが、彼の気さくなキャラクターがお客様にも伝わり、学生にも「地元をはじめ、皆に愛される大学のバンドとしてのよりよい方向性」を共に創って行きたいという気持ちも伝わった良い公演だったのではないか、と思います。
私はOBなので、演奏に対する諸処の評価は厳しいモノとなりますが、その中にあって、記念委嘱作品である 小野寺 真さんの「吹奏楽のための断章II」は白眉であったと思います。コンテンポラリ的な響き(しかし奏法的には特殊奏法などは使わない一般大学生でも十分演奏可能な表現方法)を醸し出しながらも、明快な主題が提示され、緊張感を以て、音が〜或は無音が〜音楽という「力」に昇華されていく様は圧巻でした。こういう作品の初演に携わる事が出来た学生は幸せだと思います。
また、私と同じくOBでもある 黒川 圭一さん編曲によるイベール「フルート協奏曲」は、ソリストである 竹澤 栄祐さん(当部顧問、埼玉大学教授)の高い音楽性と力量を堪能出来ましたし、 三浦 秀秋さん編曲のレスピーギ「ローマの祭り」は彼の高いサウンドデザイン力もあり無駄な響きを抑えつつも重厚さを失わない堂々たるものでしたし、松元さんの持ち味であるドライヴ感溢れるさばきで(学生はもうちょっとハッチャけて欲しかったし、待つところではグッと堪えてほしかったけど)好演だったと思います。
これから社会に出て行く学生たちは、大切な大学生活の中で、トライ&エラーを繰り返しながら、破綻してもいいから表現するためには絶えず前に転んで欲しいし(後ろに転ぶとね、スキーと一緒で怪我しますよ)、どんな仕事に就いても「小さくまとまって、なるだけトラブルがないのが吉」みたいなショボい着地点ではなく、「どんな事でも創造的に取り組むことによって産みはしんどくても、やがて全てが楽しく良い方向に回る」ということを学んで欲しいと思っています。そうでないと世の中変えられませんしね。(そんな感じの話を打ち上げで上記の皆さんともしましたよん)